マージンデット(Margin Dept)とは平たく言えば借金して株式を購入している額のことをいいます。

米株相場ではこのマージンデットの規模が史上最大のレベルに達しようとしており、相場の下落が進んだ場合とんでもないことが起きる可能性を指摘する向きも増えています。

果たして相場にはどのようなリスクが降りかかってこようとしているのでしょうか。

レバレッジをかけるということは借金して株を買うこと

マージンデットが大きくなるということは、現実的にはどこからか借金をして取引きをするというよりはレバレッジをかけた取引、信用取引を行う顧客が増加していることを示唆しています。

現金を調達しなくても一定のレバレッジをかければ少ない証拠金でも十分に大きな取引ができるわけで、直近の株価の大幅上昇に合わせて市場参加者がめいっぱいレバレッジをかけて相場に買い向かっていることが見えてくることになります。

Chart Advisorperspectives.com

Advisorperspectivesが提供する上のチャートを見ますと、S&P500の価格の上昇に連動するようにマージンゲットの額もぼう大なものに膨れ上がっていることがわかります。

株式市場がこのまま上昇傾向にあれば特段問題はないわけで、これが一転して下落に転じるようになる状況下では、とくに高値で買い向かった投資家に大きな問題が生じることが懸念されはじめています。

相場の大幅下落が起きればこれまた史上最大のマージンコールが起きる

様々な投資情報を読者に提供することで有名なSeeking Alphaのブログでは、史上最大のマージンコールが市場のクラッシュをもたらすことになるのではないかといった予測記事が掲載され話題になっています。

レバレッジをかけて取引きするということは、一定の価格にまで相場が下落するとマージンコール、つまり追証を求められることになります。

どれだけ低金利の世の中であっても市場参加者は、その追証を支払うために資金繰りに奔走することとなり、支払いができないのであれば強制決済の危機に直面することになるわけです。

こうしたマージンコールはいつもの相場にも付きまとう問題ですからそれほど驚くことではありませんが、一斉に追証を要求されて支払い不能から強制決済が実施されるような事態に陥れば、相場はそれだけで大きく下落することが容易に予想されるところです。

直近ではビットコイン取引きにレバレッジをかける仮想通貨FXの取引きにおいて、相場の暴落から追証が発生し一斉に強制決済が発動することでさらに相場が下落するという事態が起きていますが、まさにそれと同じことが米株市場全体で起こりかねないリスクがあるということです。

これは昨年から市場に大量参入してきているロビンフッダーなどの個人投資家の売買でも同様の問題を抱えており、ひとたび相場が下落しはじめるとそれが起因して暴落の引き金を引きかねない問題に発展する可能性もでてくることになります。

追証資金の確保がもたらすミンスキーモーメント

こうした追証の大量発生にともなう資金繰りで登場することになるのが、ほかの金融商品で利益が出ているものを売って補填するというやり方で、過去にも株価の暴落は他の資本市場の商品を投げ売りする動きに繋がることが非常に多く、結果的に資本市場全体が暴落に巻き込まれることになることが判っています。

こうした状況はミンスキーモーメントなどとも呼ばれますが、株の下落でなんの問題もなかったはずの金や仮想通貨などがそれに巻き込まれて売り込まれるというのは、やはり資金繰りから起きることが確認されています。

相場の暴落メカニズムというのは現在でもはっきりしないところが多いもので、ほとんどの市場参加者が可能なかぎりレバレッジをかけて借金で株の売買に向き合っている状況下では、一旦相場が下落しはじめるとその追証補填のために次々とほかの相場の商品が売られることになり、そのレベルが短期間で猛烈に加速する形で結果的に暴落を招くことになるのはどうやら間違いなさそうです。

市場空前のマージンコールが巻き起こるというのはまさに相場大暴落のひとつのインジケーターとなり、ここからの相場では相当気をつけなくてはならないことを示唆しているといえます。

こう考えますと暴落はいつでも起きることが理解できます。

直近の相場状況を見ていますとまだ大丈夫という感覚が強まりますが、突然相場が下落しはじめると様相が一変することも十分に意識しておく必要がありそうです。