3月16日からロシアのソブリン債の利払いが始まりますが、完全に経済封鎖を食らって対外資産にも外貨準備でかかえていたユーロや米ドルなどにもまったくアクセスができないことにより、いよいよロシアはデフォルト・債務不履行に陥るのではないかという見方が強まっています。

実際の利払いは1か月ほどの猶予期間がありますが、まず3月16日にドル建て国債1本の合計金額は1億1700万ドルで、ウクライナ侵攻を受けて欧米が大規模な経済制裁を発動しロシア側が対抗措置を講じて以降、初めての対外債務支払いであることからどう切り抜けるのかが注目されています。

現状では一応手元にあるドルでの支払いが行われることになりそうですが、最悪ロシアルーブルでの支払いになる可能性もあり、規約上そうした記載のある債券も存在するようで当面はデフォルトを先延ばしできる可能性もではじめています。

ロシアが起債した国際金融市場における債券は400億ドル以上にのぼっており、ほぼその半分を海外投資家が保有するとされています。

それだけにデフォルトになり元金も戻らないとなれば結構な騒ぎになることは間違いなく、今月中にさらに6億1500万ドルの利払い、また4月4日には20億ドルの債券が元本の満期返済を迎えるので、ロシア中央銀行の外貨準備凍結はその効果を発揮しつつあることが見えてきます。

意外に小さいロシアのGDP

ロシアの2020年の名目GDPは1超4780億ドルで、実は韓国よりも小さい世界11番目の規模となっています。

この下に続くのがブラジルとなり国の面積の大きさと保有核兵器の莫大な本数を別にすれば決して大国ではなく、日本のGDPの3分の1以下という予想以上にこじんまりとした経済の国であることがわかります。

対外債務も意外に小さく、今回利払いが問題になりそうな外貨建てはロシアソブリン債の中ではたった3.1%に過ぎず、さらに自国通貨をいれたロシア政府のソブリン債比率は
0.4%とかなりそのウエイトは少なめです。

上述のロシアのGDPベースでは1.7%なので今回の経済制裁がなければ実は簡単に支払える額であるともいえます。

デフォルトとなると減損になる金融機関やファンドなどがでるのは当然のことですが、完全にデフォルトに落ちても損失を被った当事者にとっては大騒ぎではあるものの、マクロ的視点で見た場合世界経済にはそれほど大打撃にはならない可能性がかなり高くなります。

すでに本邦のメガバンクなどでもデフォルト前に今期中に減損処理を始めているところもあるぐらいなので、4月にかけて市場がパニックなることはないでしょう。

ただデフォルト確定ならロシア系民間企業の債券にもその影響が波及

今回利払い不能、あるいはドル返済がままならずルーブル払いになれば、国債だけでなく、天然ガス独占企業ガスプロムや石油会社ルクオイル、国内最大手行ズベルバンクの社債も巻き込み、外貨建て債務(総額約1500億ドル=約17兆7500億円相当)の連鎖的デフォルトが発生する可能性がでてくることになり、ソブリン債よりもこちらのリスクのほうが大きくなりそうな気配も漂いつつあります。

これが現実のものになりロシアデフォルト確定になれば、ロシアルーブルはさらに暴落、国債はもはやほとんど価値を失って、ここからロシアが資本市場で資金調達をすることはできず完全に締め出しを食う可能性さえ出てきます。

こうなると中国がどのような助け舟を出すかも気になりますが、原油や天然ガスについては中国のCIPSなる国際決済システムを利用して再起を図る可能性もあり、現実に中東各国は人民元建て決済で中国に石油を輸出するとも発表していて、ドル建ての決済が中心にならなくなる新秩序が突然確立してしまうという驚きの事態も起こりそうです。

猶予期間は4月15日までになりますので、ここからロシアがどう出るのかが注目されます。