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このコラムでも随時状況をご紹介してきた米国の債務上限問題ですが、週末の5月27日ホワイトハウスと下院共和党の交渉担当者は約1時間半電話協議を行い、原則合意を取りまとめたことを発表しています。
最初の報道ではシューマー氏と共和党のマコネル上院院内総務は連邦債務の法定上限を4800億ドル(約53兆5800億円)引き上げることで合意し、この額であれば財務省は12月3日まで支払い義務を遂行できるとしていたようですが、バイデン大統領とマッカーシー下院議長による電話会談では原則合意には債務上限の適用停止に加え、非国防支出を今後2年間にわたりほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれたようです。
全体としてはかなり共和党が妥協したことがうかがわれる内容ですが、ここからは議会で正式に承認するプロセスに乗れるかどうかが注目されるところとなります。
債務上限問題は米国議会では年中行事となっているので、こうした政治的決着がはかられるであろうことは多くの市場参加者が期待していましたが、案の定そのとおりになったというのが今回の問題の流れとなりました。

詳細は依然として議会運営任せの状況に

マッカーシー下院議長は議員に周知した後31日に下院で採決するとしていますが、議会にこの議案が落とされた段階で両党から妥協案への反発も予想され、すんなり通過するのかどうかが大きなポイントになりそうです。
さすがに両党のボス同士が会談で決めたことなので議会の現場に抵抗勢力が登場しても結果的には承認が得られることになるのはほぼ間違いありません。

今回の合意の詳細は議会での承認段階を待つことになりますが、いずれにしても政治的にとりあえず先延ばしにした感は否めず、早ければ年内12月にもまた同じことで揉める可能性があり、とにかくデフォルトだけは回避したという印象の強い内容となっています。
使うだけ使ってしまった感のある米国連邦政府予算をここから縮減していくというのはそれなりに厳しい道のりになりそうで、民主党と共和党の対立が激化することも考えられるだけに、解決になっていないと厳しい見方をする向きも増えているのが実情です。

この報道を受けて米株は上昇、債券金利が下がるかどうかに注目

米国の債務上限問題を巡ってはそのリスクが高まったことから米株が大きく下げる動きとなってきましたが、すでに26日の相場では早期決着が期待されたことから大きな買い戻しがでており、火曜日以降の相場がさらに上昇するかどうかに注目が集まります。
米国債金利についてはFOMCの利上げが続くことから上昇した局面が大きいもののデフォルトが回避できれば下がる可能性もあり、これがドル円の先行きに影響を与える可能性がでてきています。
これは実際に相場の成り行きを見てみないとわからない部分でもありますが、少なくともドル円を上下動させる不測の材料がひとつ減ったことだけは確かで、ここから相場が落ち着くことになるのかにも関心が集まります。

市場ではデフォルトが現実のものになることを想定した動きも見られましたが、最悪の事態だけは回避されたことから相場がどこまで落ち着きを取り戻すかがポイントとなります。
6月相場に向けてはFRBの利上げがどこまで続くことになるのか、またその先利下げがあるのかが大きなテーマになり、一旦すっかり落ち着いたかにみえる米国地銀の破綻問題に新たな問題が生じるのかどうかも気になるところです。

そして先週あたりから日銀が6月、もしくは7月にやはりYCCを巡って政策変更を出してくる可能性も新たなテーマになってきています。
足元のドル円はすでに140円を超えてきており、昨年9月に145円台後半まで円安が進んだことを受けて実施された円買い市場介入が思い出される水準が近づいています。
こちらもここからの相場のテーマとして動いていく可能性があるので、為替相場は引き続き予断を許さない時間を経過することになりそうです。