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今年3月に開催される日銀政策決定会合において、日銀が実に5年ぶりにマイナス金利の深堀を行う意向であるといった報道が流れ、10日の為替市場では瞬間的にドル円が跳ね上がるといった動きがみられました。

新型コロナの感染拡大が大きく広がった中にあってもこれといった追加緩和策を示してこなかった日銀でしたが、ここへきてさらにマイナス金利を拡大するのにはどういう意図があるのでしょうか。

市場では間違いなく自国通貨安政策の強力な推進がその理由であると見る観測が強まってきています。

経済対策としての効果は今一つはっきりしないマイナス金利

日銀がマイナス0.1%のマイナス金利政策を実施しはじめたのは2016年2月16日の日銀政策決定会合でのことで、今年3月の政策決定会合でさらにマイナス0.2%などの政策を打ち出した場合には、5年ぶりの利下げということになります。

ただ、日銀の緩和政策の大義名分となっている実質インフレ率年利2%の達成は、黒田日銀がスタートした2013年からすでに8年経過してもなんの成果もでておらず、しかも実態景気はややもすればデフレに逆戻りになりかねない状況です。

マイナス金利が経済に与えるポジティブな本質的効果が一体どこにあるのかについては引き続き議論の余地のあるところで、先行実施したスウェーデンなどは既にその実施を終了するといった状況にあるのもまた事実です。

自国通貨安が最大の政策目的か

既に退任している前BOE総裁のカーニー氏は、BOEをはじめとして中央銀行がなにかとマイナス金利の政策を持ち出してこようとする背景には、やはり自国通貨安政策が強くその根底にあると暗に批判をしています。

日銀のマイナス金利はまさに円安のための政策であり、とくに米国の債券金利がじりじりと上昇し始めている中では、円の金利がさらにマイナス化した場合のコントラストはさらに鮮明になることから、間違いなく円安政策を強く推進していくことがこうした決定の背後に存在するものと思われます。

FRBイエレン議長は就任にあたっての議会の公聴会でドル高を容認するかのような発言をしていますが、実際には莫大な連邦債務を抱えた中ではドル安のほうがいろいろと都合がいいはずで、日本の隠密ドル高円安政策を本当にどこまで黙認することになるのかも大きな注目を集めそうです。

本来国力ということで言えば自国通貨が強いほうが都合のいいことは多いはずなのですが、どこの国も借金漬けでしかも輸出が儲からないという時代に直面して、通貨安を志向する国が非常に多くなっているのが気になるところです。

2月から4月にかけてはシーズナルサイクルとしてもドル円は上昇しやすくなりますので、一旦105円台から沈んで104円台からさらに下を試しそうな雰囲気になってきているドル円相場も、年度末に向けて再上昇する可能性を考えておく必要がありそうです。

ただ、日銀のマイナス金利深堀だけでドル円がどれだけ上昇できるのかにはまた大きな疑問も残るところで、ここから106円台、107円台と上昇するのに果たしてそれだけが燃料になるのかどうかにも大きな疑問が残ります。

いずれにしても為替相場は各国の低金利政策の中で違いが見られないことから、なかなか明確なトレンドがでるような大きな動きをしなくなっていますが、日銀の政策変更で多少なりともボラティリティが示現するのかどうかに期待したい状況です。

ちなみに3月日銀政策決定会合の発表は3月19日の金曜日ということになり、まさに年度末を迎えた企業会計には大きな影響を与えることになりそうです。