2月24日の東京タイムに突然始まったロシアのウクライナ侵攻は当初、東部の一部の週だけ独立させることで決着がつき戦闘はごく短期間で終了すると思われていましたが、結果的にはウクライナ全土を巻き込む総攻撃のような状況に陥ってしまっており金融市場の楽観的な見通しが大きく崩れる状況に突入しています。
3月3日の米国上院公聴会で、月内のFOMCで0.25%の利上げをコミットしてしまったパウエルFRB議長の発言のおかげで市場のテーマからFRBの金融政策がすでに外れる格好になっており、週明けはまたウクライナネタで相場が動くことが容易に予想されるところです。
週明けはECB理事会の政策発表、また毎月大きく相場が動く米国CPIの発表も控えていますが、すでにFRBの政策も一定のレベルに収まっている中ではあまり相場を動かすドライバーにはならなさそうで、依然としてウクライナ情勢に市場の注目が集まるでしょう。
為替の注目はユーロ円、ポンド円などのクロス円と対ユーロでの豪ドル、NZドル
今回のウクライナ紛争でもっとも影響を受けている通貨といえば地続きで隣接しているユーロ圏のユーロであり、紛争が激化する度に下落し南ウクライナの原発攻撃ではさらに手痛い下げとなりました。
週単位の動きでみるとユーロドルもユーロ円もEUからは離脱したポンドもかなりの下落となっていますが、ウクライナ情勢次第でさらに下げる可能性があり安易に突っ込み売りは避けたいですが、下目線は引き継付き継続させていきたいところです。
ドル円は有事のドル高も一時示現しましたが欧州系通貨のクロス円でどうしても円高が進むことから結果として動きが出にくく、より大きな利益を得るのならほかの通貨をチェックしていくことがお勧めです。
一つ興味深いのが豪ドルとNZドルの存在で、ウクライナや欧州圏から地理的にもっとも遠いことから安全逃避通貨として特にユーロ、米ドルからのリスク回避的な買いが強まっていることです。
これはウクライナ危機が続く限りは継続しそうな動きで本来シーズナルサイクル的にはどちらのオセアニア通貨も対ドル、対ユーロで弱含むことが多いのに、全く例年と異なる動きになっている点が注目されています。
ユーロからの逃避ということではスイスフランも買われていますが、スイス国立銀行(中央銀行)はユーロとのパリティレベルで必要に応じて為替介入を実施することを示唆しています。
ただ長年為替の取引をしている方がすぐに思い浮かぶのは2015年1月の突然の同中銀の為替介入中止による相場の暴落であり、激しい損失に見舞われた経験をお持ちの方も多いことと思います。
このスイス中銀は2014年、とにかく対ユーロ1.2レベルで永続的に為替介入を行うと公式に宣言したものの、介入原資が枯渇した時点であっさり即日介入終了を宣言するといっており、信用できる存在ではない点が気になります。
ここからのウクライナ情勢は想定外の事態に発展することにも注意が必要
ブルームバーグではすでにここからの6つのシナリオを想定しているようですが、一番楽観的なのがウクライナの勝利、逆にロシア恐怖政治によるウクライナの屈服、決着が明確につかない長期混濁のアフガニスタン化、最悪の核攻撃の実施、ロシアの内部で政変が起きるロシア革命、そして一番あり得そうなのが中国の介入というものです。
こうしたシナリオは個人投資家が分析できるようなものではなく、個別に検証するとさらに難易度が上がります。
6つのシナリオは一見しただけでも相当な振れ幅があり、とくに核攻撃などが現実のものになれば投資どころではなくなりそうな状況もありうることは予め認識しておきたいところです。
こうなるとどのような戦争の展開と終結になるかを考えるよりは、相場がどう動くのかをしっかりチェックしていくことが重要でしょう。
とくに動きが良く判らないと感じた場合には一旦相場から退場して様子を見るぐらいの柔軟性をもつことも必要になりそうです。
足もとの相場を中心的に担っているのはプロのファンドマネージャーであれ個人投資家であれミレニアル世代以下であり、ややもすれば2008年リーマンショックも知らないのが現実です。
ましてや1998年のロシアのデフォルト関連でどのように相場が動いたかを経験している向きは相当限られており、現在の戦争相場はほとんどの市場参加者が先行きを見通せないのが正直なところです。
それだけに相場全体で全く想定外の方向に走り出すこともありえるので、日頃に増して十分に注意したトレードを行うことが肝要な時間になりそうです。