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米国大統領選まであと2週間ということで、相場は様子見が強まっています。

米株市場ではトランプ、バイデンのどちらが勝っても結局株価は上昇軌道に乗るので、コロナが収束しない限りは心配ないといった猛烈な楽観論がある一方で、別のリスクが顕在化してきていると指摘する向きも増えています。

それが大統領選挙後に大統領がすんなり決定せず、司法判断にもちこまれて長く時間を要することになるといった不測の事態です。

今回の選挙ではすでに郵便投票が相当数でており、これが開票に影響を及ぼすのはほぼ間違いない状況です。

果たして開票からどのぐらいの時間を要して大統領が決まることになるのかが非常に大きな問題になりそうで、株式市場も為替市場もリスクオフに見舞われそうな気配が高まりつつあります。

2000年のケースでは法廷闘争で一か月以上の時間を消費

今回のトランプ、バイデンの大統領選挙では郵便投票という仕組みが導入されていることから、そもそも3日投票後開票してもすぐには決着がつかないというのが大方の見方になりつつあります。

選挙結果の遅れで思い出されるのが2000年のブッシュ対アルゴアの接戦で、フロリダ州での開票結果その得票数の差が総票数の0.5%以下となり、フロリダ州法に基づいて再集計が行なわれるととなったのですが、この再集計の方法をめぐって両陣営が裁判沙汰にしたことから大統領決定は11月7日の投票から一か月以上も遅れることとなり、この間株式相場はかなり下落することとなりました。

その後連邦裁判所は、フロリダ州の最高裁判所が許可した手集計による票の再集計はそれを平等に行う基準が無く、また公正な基準を設ける事は時間的に不可能なため中止すべきという判決を下し、12月13日にゴア側がこれを甘んじて受け入れ負けを認めることでブッシュの再選が決定しています。

今回は郵便投票が絡むことから、2000年のフロリダのケース以上に接戦や再集計といった問題が生じやすく、トランプ陣営は既に裁判所が決着してくれるであろうといった見方を示していることから、もはや司法闘争になることは間違いなさそうな状況です。

民主党バイデン陣営も既に300名からの弁護士を裁判のために確保していると言われており、前代未聞の裁判での争いとなることが危惧されつつあります。

2000年の選挙では8%近い株の下落を経験

上のチャートは2000年におけるNYダウの推移を示したものです。

この年はITバブルが崩壊となり、もともと地合いがよくなかったところにもってきてこの大統領選の混戦が重なったことから、11月以降12月まで株価は結構な下落を経験することとなり瞬間的にせよ8%近い下落を経験することになります。

それでも一か月余りでゴアが負けを認めこの程度の下落で済んでいますが、トランプの場合最後まで抵抗する可能性が高いわけで、年内に決着がつくかどうかも危うい状況で、裁判闘争がさらに長引いた場合には株価はこの時以上の下落に陥るリスクも高まります。

こればかりは開票してみないことには判らない問題で、誰が大統領に選出されるかよりも大きなリスクになりそうです。

米株市場はそもそも株価水準が相当高いため、10%の下落であってもNYダウならば平気で2800ドルといった下落の危険性があることから注意が必要で、これがきっかけになって年末大きく株価が下落する危険性さえありそうな状況です。

為替に関していえば米国で起きているリスクイベントですからドル円もドルが売られることは十分にありそうで、通常年末ならば上昇するドル円も今年は異なる軌道を描くことを真剣に注意する必要がありそうです。

現状ではこの大統領選を控えて為替はほとんど動きがなくなりつつありますが、11月3日をきっかけにしてそれまでとは全く異なる状況に陥ることも想定しておく必要がありそうです。