米国司法省・通称DoJは6月7日米パイプライン大手のコロニアルパイプラインが5月にロシアを拠点とする犯罪集団・Darksideからサイバー攻撃を受け支払ったとされたビットコインによる身代金の80%以上の回収に成功したと発表し、驚きの声があがっています。
これまでビットコインなどの仮想通貨を使った身代金の支払いは全く回収の目途がつかず、とられっぱなしの状態が続いたわけですが、ビットコインの匿名性を民間の力も結集して突破して回収できたわけですから確かに画期的な奪還作戦であったことが窺われる状況です。
FBIの捜査成功でビットコインは匿名性も安全性も失う羽目に
米連邦捜査局(FBI)のポール・アバテ副長官は「不正な資金をFBIから隠蔽することはできない。われわれは今後もあらゆるリソースを使ってランサムウェア攻撃を阻止し、民間企業と米国民を保護する」と語っており、具体的にどのように回収活動を行ったのかについてはもちろん捜査上の秘密としてまったく開示していませんがデジタルウォレットとその中のコインを追跡するために暗号キーを入手して追跡したことはどうやら間違いなさそうな状況です。
ビットコインはブロックチェーンによりすべての取引き情報は公開されるものの、その一方でウォレットのビットコインアドレスなどと個人情報が結びついていないために匿名性が確保されており、他に類を見ない安全で匿名性がしっかり守られる仕組みであるとされてきたわけですが、今回のFBIの捜査成功でその安全性に大きな疑問が投げかけられることとなってしまったようです。
マネロンや身代金送金需要の全てを失ってBTC相場は大幅下落か
非常に不遜な言い方になりますが、これまでビットコインは個人のマネーロンダリングや不正送金、またランサムウェアなどの身代金の送金にはもってこいの仕組みであり、ある意味こうしたブラックな集団の実需として機能してきたことは否めない状況でした。
しかし今回の米国司法省による総力戦での資金の回収が現実のものとなったことで、こうした不正利用が激減する可能性がでてきており、ビットコインを保有しても意味がないと感じる向きの売りも重なってその価格は急激な下落をはじめています。
Bloombergの記事によればこのままさらに下落して下手をすれば2万ドルを割る可能性もあるということで、もちろんこの件だけが相場下落に影響を与えているわけではないと思われますが、悪意の利用者にとっては想像以上にショッキングな事態を迎えていることが垣間見えてくる状況です。
また今回のビットコイン奪還劇で話題となっているのがBTCとしては8割を回収したにも関わらず対ドルでの身代金支払い額ではビットコイン自体がこの1か月あまりで大きく下落したことから支払い時の440万ドルからほぼ半額にあたる230万ドルしか回収できなかったということです。
もちろん再度値上がりを待てばさらに大きな金額で回収することができるのでしょうが、身代金を盗んだ強盗団もよほど高値のときに換金しないとその価値が大きく下がることになり、およそ通貨としての価値がない点も明らかになってしまいました。
もちろんニュースとしては大変な尽力で成し遂げられた偉業であるわけですが、ビットコインのクラスタにとってはその存在自体を否定しかねないほどショッキングな状況に陥っていることがあらためて理解できます。
しかしこれでビットコインの値が完全に崩れることになるとすれば一体この仮想通貨の社会的なバリューはなんだったのかという問題も浮上しそうで冷静に考えるとこの通貨は今最大の危機に直面していることを改めて感じさせられる次第です。