Terraは日本の仮想通貨取引所では売買できないものの、海外FX業者では入金手段として採用しているところもかなり多いことから、USTの表記をご覧になった方も多いと思います。

そのTerra(LUNA)が先週突然暴落し、ほぼ無価値化状態に陥ったことから仮想通貨界隈では大変な影響がでており、米国を中心として利用者が大きな損害を食らうという状況に陥っています。

一体何が起きているのかまとめてみました。
そこにはステーブルコインという実に安定性のある名称にとてつもない誤解があることが浮かび上がって来ていることがわかります。

韓国発の米ドル連動ステーブルコイン

Terraは韓国中心に活動するブロックチェーン上で法定通貨、端的に言うと米ドルと価格が連動するステーブルコインを発行しているプロジェクトです。
2018年設立のためそれなりの時間が経過していますが、知名度が上がったのはごく最近でした。
米国では当たり前のように仮想通貨FXの業者間の資金移動にも使われるようになってきています。

TerraはLUNAというガバナンストークンを活用することで価格を安定させていることから、Terra(LUNA)という形でネットでは紹介されることが多いです。
そもそも米ドルと1対1で連動するように設計された仮想通貨を運用するのがそんなに難しいのかという基本的な疑問が生じると思いますが、この仕組みは供給する通貨分だけのドル通貨準備が必要とされるはずなのに、アルゴリズム型ステーブルコインという形で全額保有することなく実現させる、という点が大きな特徴であり反対に大変なウイークポイントになっています。

UST開発元のTerraform Labsは、独自の仮想通貨であるLUNAを発行して1ドル相当のLUNAを1USTと交換できる仕組みを構築し、常に1UST=1ドルに近づけるようにLUNAとUSTの発行枚数が調整されるようになっており、これがTerra(LUNA)と表記される大きな理由になりました。

ただこうしたステーブルコインは一見どこにも投資妙味がないように見えて、とんでもない利用者の売買が行われることにより破綻への道を辿ることになります。

TerraとLUNAを使ったアービトラージのような取引が破綻へのきっかけか

通常ステーブルコインは固定化した価格の仮想通貨のため、それを売買することで利益をあげるなどというのは思いつきませんが、USTのユーザーはどうもそうではないらしくとんでもないところに目をつけて差額で儲ける取引に多くのトレーダーが参戦してしまったことが、結果的にこの通貨を破綻に導く大問題となっていることがわかりました。

具体的には、USTの価格1ドルを割り込んだ途端に多くの個人投資家はUSTを購入し、その直後即座にLUNAと交換することで微々たる差益を確保することに奔走したようで、購入したLUNAは即時に売り浴びせたことからLUNAの価格も大きく下がりはじめるという不測の事態に追い込まれていきます。
ステーブルコインの場合、随時交換可能という保証のためには発行した金額に相当する資金を常に保有していることが本来必須の条件として求められますが、LUNAの仕組みは通貨準備ではなくアルゴリズムでそれを制御する形となっていたため、取引量がこのようなアービトラージ的なオペレーションで爆発的に増加することをまったく想定していなかったことが大きな問題につながっています。

今回のLUNAの場合、4月段階で400億ドルは利用者が出口に殺到する事態となったことから時価総額は5億ドルにまで減少し、さらに売りが加速されたことから下落幅は限りなく99%以上になり、言ってしまえば事実上無価値化に陥っています。

当然USTにも売りが殺到し、1対1の等価交換のはずのUSTは0.14ドルといった数字になり、こちらも無価値化は目前の状況になっています。

上のチャートのように円建てで見てもその価値はガタガタで、対ドルではもっと酷いことになりつつあります。
投入した資金が無価値化になったまでは民間が発行したステーブルコインなので仕方ありませんが、USTを利用して仮想通貨FXの取引をした向きは完全に証拠金不足に陥って、下手をすれば大量の追証を求められることになるため仕方ないでは済まされない状況に陥っているようです。

ステーブルコインという名称だから価値は常に1UST1ドルと思い込んでいた向きも、民間が運営する通貨ではそんなことは全く担保されていないことに今頃気づき、仮想通貨界隈では阿鼻叫喚の時間帯がまだまだ続きそうです。

この件でどのぐらいの追証が発生しているのかはよくわかっていませんが、ほかの金融商品を持っている個人投資家の場合、とにかく売れるものは何でも売ってその資金に充当しようとするため、株やここまでかなり利益がでたドル円のロングなども一斉に手仕舞いになっているのはよくわかる状況で、金融市場全体にどの位の影響がでることになるのかが気になるところです。

久々に仮想通貨界隈ですさまじい損失案件が出ましたが、周辺の仮想通貨にどれだけ飛び火するかも注目したい時間帯です。