5月の連休明け9日、実需の買いも集中したのかドル円は131.347円という年初来高値をつけましたが、12日のロンドンタイムには株下げに相関する形で127.512円と実に3.8円なんということもなく下げてしまい、その後17日の同じくロンドンタイムにショートカバー気味の展開で129.778円をつけてからは上下動を伴いながら上値を切り下げている状況がつづいており、米株の下落が加速するなかで月末にむけてどうなるのかに関心が集まりつつあります。

4月の国内店頭FX業者の取引実績によれば3月までドル円、クロス円全般で取引が増加していたものが、なぜか月を超えてからはドル円に集中するようになり、クロス円の取引は全般に大幅に減少するようになっています。
それだけドル円に対する国内個人投資家の動向が注目されているわけですが、投資家のテクニカル分析は同じチャートを見てもかなり異なっています。

ファンダメンタルズ主体でお送りしているこのコラムですが、なかなか興味深い状況が示現していますのであえて同じチャートを使いながらことなる予測があることをご紹介していきたいと思います。

ドル円ダブルトップ論


今回ご紹介する分析手法は全く同一のチャートで、その形状を把握するためにあえて6時間足というあまり使わない時間足を利用しています。

まず一つ目でご紹介するのがダブルトップという見方です。
4月末と5月初旬に2回131円台をトライし、2回目は若干値を伸ばしましたがその後大きく反落しているため、テクニカル分析の素人が見てもダブルトップを形成したことはすぐにわかります。
その後127.500円レベルまで落ちた後再度上値を試したわけですが、129.400円レベルで抑えられて足もとでは下方向を目指しているように見えるというのがこの予測で、最低でも126円程度、あるいはさらにその先の125円台まで値を下げる可能性があるとこの手の分析をしているトレーダーは考えているはずです。

同じチャートなのにダブルボトムという見方も

2つ目にご紹介するのはダブルボトムを形成しているという見方です。
131円台のダブルトップではなく、下げたほうの127円ジャスト付近まで2度下げた部分をダブルボトムとして認識し、再度128.600円レベルを上抜ければさらに131円方向に上伸していくという見方です。
過去3か月近く上昇してきた相場なので、ダブルトップのほうを無視してダブルボトムを意識したところから再上昇を予測するというのはかなり上昇期待のバイアスがかかっている感じもありますが、同じチャートを提供されてもこうした見方をする投資家が存在することは注目していきたいところです。

三尊天井形成と見る向きも存在する


さらに上方向に積極的な見方をしているのが三尊天井形成説をとなる向きです。
こちらも131円台のダブルトップは大ぐくりで一つの山とみて、先週の安値レベルで127円レベルが底値だったことから、やはり円安に回帰するという見方もあるようです。
三尊天井だとさらに三角形の形成時期が長くなるので、確かに上方向に戻ることも考えられるというわけです。

テクニカル分析は人に依存せず必ず自らの手で納得のいくものを利用するのが基本

このように限られた期間で顕著な動きをするドル円チャートを見てテクニカル分析してみても、下に戻ると考える向きと、上に再浮上を想定する向きがいるのは非常に興味深いところです。
つまりもともと上昇を想定するトレーダーはどうしても上昇を示唆するテクニカル分析をしがちですし、逆に下落を強くイメージするトレーダーは下落を示唆する分析をしがちであることはなんとなく分かります。

相場は良くも悪くも上に行くと思う投資家と、下がるという投資家が相まみえることで実際に動きがでるものなので、見立ての違う市場参加者が相場に混在していても全くおかしいことはありませんが、トレーダーが自分で分析して考え出した先行きの見立てならば完全な自己責任となり、とにかく自分を信じることさえ行えばなんの問題もありません。
しかし人が行っている分析の結果と、先行きの見立てに安易に乗ってトレードするのは非常に危険だということを認識しなくてはなりません。
むしろより慎重にのる心構えが必要になるでしょう。

どの方向分析が正しかったのかは恐らくここ1週間程度の相場の結果がしっかり指し示してくれると思われます。
ファンダメンタルズ分析だけではもちろんトレードはできませんが、テクニカル分析一本で勝負するというのも思いのほかリスクがあるものだということは予めしっかり理解しておきたいところです。