東京証券取引所が発表した株式分布状況調査によりますと海外勢の2018年度末の日本株保有比率は29.1%と前年度から1.2ポイント低下し、アベノミクスが始まって以来最低の水準に逆戻りしていることが明らかになりました。
日銀の異次元緩和との組み合わせで円安と株高政策を進めてことに海外のファンド勢が乗っかる形で大きく株価は上伸し、それとともにヘッジの形でドル円も買われたことから2013年はとくに株価と円安が進む結果となりました。
しかしその後は日銀が緩和を進めないかぎりドル円は大きく上昇することはなくなり、株価も日銀主導にPKOがサポートする形で2万5000円までは無理やり持ち上げた感がありますが、その後は下値を支える向きがいるため大きく値が崩れることもない代わりに上昇も覚束ないという極めて中途半端な状態に追いやられています。
官製相場の行き過ぎが結果的に外人の関心を呼ばなくなった
本邦の株式関係者とそのお抱えアナリストはPERとPBRで国内株がいかに割安であるかを延々と説明し続けるわけですが、割安と言われて久しいわりに日経平均がこれだけ上昇しないとなればもはやその見方が機能しないのは明白であり、なぜ上昇しないのかについて現実を見据える必要になっていることは言うまでもありません。
まず海外のファンド勢が非常に嫌がり始めているのは官製相場の度合いの酷さについてです。米国でも株式市場にはPPTが登場して無理やり相場を持ち上げる作業をしていますし、海の向こうの上海総合指数でも中国政府が明らかにPKOを入れて株価を持ち上げる人工的な努力を行っていますが、その度合いの酷さが目につくのが日本で、とくに日銀の占有率が高まり過ぎたことも海外投資家の大きな嫌気につながっているようです。
ファンド勢は中央銀行の動きに絶対的な信頼は置いていませんから、なんらかのことがきっかけて株の買い支えから離脱するといった動きになった場合に一気に価格が崩れることを非常に気にしているようです。
実際問題、未来永劫などと言われたスイス中銀の対ユーロの一定レベルの介入もいきなり2015年1月に原資がなくなったのでやめるとアナウンスしたことなどは記憶に新しいところですが、絶対とい言葉はこの世界にはないことを改めて感じさせられます。
政府統計が全く信用ならないのも日本株不信の根底に存在
国内にいてもどうも信用ならないと感じる国の統計についてもっとも違和感を感じているのは海外の投機筋のようです。戦後最長の景気拡大と言われてもどうも経済
状況はよろしくないし、実質賃金も上げのかいざんをしてみたら、今度は年金の問題で下げざるを得なくなっているわけで、しかも景気はよくないのに増税だけはスケジュール通りに実行となれば無理して日本株に投資する気が起きないのはむしろかなり正常で当たり前の話といえます。
GDPをはじめとする国家統計が嘘か本当かよくわからないというのはもはや致命的な問題で、世界的に利下げムードが高まっている中で唯一この国だけが消費税の増税を断行するというのも国内株投資に二の足を踏ませる大きな要因であることは間違いない状況です。
2013年アベノミクス初年度は実に海外からのファンドの投資は年間15兆円におよび、並行してドル高円安が進んだことから多くのファンドがほぼ同額の資金をヘッジでドル買いとしたことからドル円も株価に合わせて大きく上昇したのはご存知の通りですが、最近では日本株買いにヘッジでドル円を買う向きは激減しており、そもそも日本株に投資しないわけですからドル円も株価上昇にともなって連動して上げることがなくなったのはよく理解できる状況といえます。既にファンドが一つの指標としている20か月移動平均線をドル円は下回っていますから、ここから110円レベルまで戻ることがあったとしてもこれを上抜けない限りは相変わらず下方向である可能性が高くなります。
足元の外人勢の投資状況はここから簡単に好転するとは思えない状況で、さらに秋の消費増税のタイミングに向けて同様の動きを加速させる可能性がありそうです。
これまでドル円は日本株の動きにかなりリンクした時期がありましたが、ここからは相関性を期待するのは結構難しそうで下がるときには一緒に下落するであろうと思われますが、上昇を期待するのは相当難しそうです。