1月に入って突如として中国での感染者数が増加しはじめたコロナウイルス起因の感染者数は等比級数的に増加の一途を辿っています。
2月1日現在で中国政府が発表している感染者数は1万2000人余りとなっていますが、実は香港大学の研究によれば中国・武漢市やその周辺都市の感染者数は1月25日時点でも7万5815人にのぼっている可能性があるとの指摘がでており、すでに世界で軽く10万人を突破している可能性さえ出始めています。
これまで金融市場では2002年から2003年にやはり中国で発生したSARSとの比較でここから先の発症の可能性を探る作業に終始しており比較的楽観的な見方をするアナリストも多くいましたが、そういう見方が実態とマッチしていないことを多くの市場参加者が認識するようになり、ここからどこまでひどい状況になるのかの織り込みが全くできないところに差し掛かってきている状況になりつつあります。
日本時間31日の未明にWHOが非常事態宣言を出したものの、中国との人の行き来や交易については制限する必要なしなどというかなり中国に忖度した内容を出したことからヘッジファンドのニュースヘッドライン連動アルゴリズムはドル円を大きく買い戻す動きにでて31日の東京市場では延々109円台で推移するといった相場が展開することになりました。
これは一時的に400円以上買い戻された日経平均もそのサポートとして機能したようですが、ロンドンタイム以降はなんら楽観視できるような材料がないことを相場が確認したことから週末ということもあって米株相場は大きく崩れNYダウは600ドル以上下落し、ドル円も109円台から引きずり降ろされLondon Fixの時点で108.400円を割るほど下押しをする展開となってしまいました。
結局31日、1月末のドル円相場は108.300円台で終了し、週明けはさらに下押しする可能性も出始めてきている状況になってきています。
1月もお仕舞いでいよいよ2月相場に入ることから日足のドル円の動きを見ますと、1月イランの革命防衛隊の司令官を米国のドローンが暗殺して大きく下落したのが1月8日の107.647円あたりとなりました。
その後一旦110円台まで回復した後、今回の新型肺炎リスクの問題から結局日足の200日移動平均線を簡単に下抜けて108円台前半にまで戻る動きとなっており、週明けは再度この107.647円をさらに下抜けするかどうかに注目が集まるところとなっていることがわかります。
ここを下抜けした場合には昨年10月3日の106円台中盤を目指すことになりそうですが、地政学リスクや政治イベントと違ってウイルスの問題はどこまで感染者が拡大するか次第でさらに相場が下落する可能性もあるだけに、直近では市場参加者がこのリスクをうまく相場に織り込めない状況になってしまっていることがわかります。
したがってチャート上の節目を語ることはできますが、どこまで下落するかは全く見当がつかないというのが為替の現状です。
当然のことながら株式市場も同様の状況でリスクをうまく織り込めないままに米株相場にはそれなりの投げも入り始めており、予想を超えた大きな下落につながる危険性も否定はできません。
したがって、当面は相場が戻ったら売りから入り、底値が確認できてはじめて買い向かうという取引姿勢をとることが重要になりそうです。
ドル円の値幅としては107円から109円50銭レベルと見られますが、場合によってはさらに下落を試すことになる可能性も視野に入れる必要がありそうです。
UKユーロ離脱でポンド、ユーロともに上昇
一方、新型肺炎の問題ですっかり影に隠れた印象の強いUKのポンドですが、1月31日に正式にEUからの離脱が決定しこれから1年間かけて細かい実務的な調整に入ることとなったことからポンドもユーロも対ドルで大きく買い戻されることとなりました。
実はこの動きはドル円にはほとんど何の影響も与えませんでしたが、長年続いたポンドの陰鬱な状況は一旦は解消したことになったようで、また今後は問題がでるのでしょうが、とりあえずはここからポンドもユーロも上昇しそうな気配になってきています。
同じ時間帯を共有しているのにここまで相場材料が異なるというのもなんとも不思議なものがありますが、2016年6月から3年半以上かけてきた問題だけにあく抜け感もあるのだろうと思われます。
2月相場はユーロもポンドもあらためて中国起因の新型肺炎の影響を受けるものと思われ、ドル円同様にこのパンデミックの動きに注意が必要になることは言うまでもありません。
発症者の拡大のみならず中国経済への影響に注目
市場では新型肺炎の感染者数のみならず中国経済への影響の深刻化に注目が集まりつつあります。
基本的にウイルスということで夏で気温が高くなればある程度の解消がはかられることが期待できますが、それでも4月まで続いたとしてもここから3か月中国経済は稼働できない状況に陥ることも考えられます。
それだけに経済状況という視点で株や為替にさらに起きな下落をもたらす危険性については覚悟しておく必要がでてきています。
そろそろ具体的な数字となって景気減速が現れてきてもおかしくないタイミングになってきています。