先週、財務省の為替介入が報道されて以降、イエレン財務長官は介入の有無については言及を避けつつも、介入は稀であるべきとの発言を行っています。

為替介入を牽制する発言が出たことにより、相場にはこれ以上介入はできないであろうと見た一部の海外投機筋による飛びつき買いが示現することとなりました。

 

Photo 産経新聞

 

2020年の介入時も、現在に至るまで介入の有無については明らかにされておらず、真相を曖昧にして終わりにすることは、もはやイエレン財務長官のお家芸になりつつあります。

しかし、市場関係者によると多大な影響力を持つ米国の通貨当局が、日本の介入を把握していないはずはなく、事前に詳細を知っていたであろうことは間違いないようです。

長い時間をかけ実施に至った今回のステルス介入は、価格の引き下げを目的としているようにしか見えませんが、日米双方の金融当局は我々の想像以上に緊密な連携を図っており、イエレン財務長官も承認するに至ったことが窺えます。

また4月の雇用統計の結果についても、財務省は事前に情報を把握していたのではないかとの憶測も飛び交っており、もし事前に情報を入手していれば、介入のタイミングに大きな影響を与えたことは間違いありません。

米国が日本の為替介入を黙認したとなれば、自国通貨安の問題を抱える国々が同様の解決策を求めることは想像に容易く、イエレン財務長官が介入についての発言を避ける背景には、国際社会における複雑な事情がある事が考えられます。

G7やG20参加国のことを考えると、財務長官という立場上、今回の真相を公にすることはできず、これから先も明らかにはならないことが予想されます。

ここから更に介入は行われるのか

さて、今後さらなる介入は実施されるのでしょうか。

多くのアナリストは、二度にわたる今回の介入で財務省は10兆円近い原資を投資しているとみており、資金的な問題から当面追加介入は行われないのではないかとの見方を強めています。

しかし、米国政府が国債の新規購入を条件に介入を認めることになれば話しは別で、7月に退官する神田財務官への花道に、介入に踏み切ることも考えられない話ではありません。

神田財務官の在任期間を考えると、5月後半から6月にかけて何らかのオペレーションが行われる可能性があるため、資金面や米国との関係性からこれ以上介入はないであろうと安心するのは時期尚早と言えそうです。

米財務省が介入以上に恐れる日銀の利上げ

米財務省は、10年以上にわたる日銀の緩和政策により、日本国内における500兆円以上もの緩和マネーが現在も米国金融市場で運用され続けていることをよく理解しています。

また直近では、新型NISAの資金がドル転し米株や米債の市場に流入しているため、日銀が円安阻止のため利上げを行うことは、都合の悪い状況と言えます。

大統領選挙が終わる11月まで、日銀は利上げを行わないようイエレン財務長から強く要請しているとの報道もあるため、神田財務官が米財務省に対し、さらなる介入の実施を迫れば、承認せざるを得ない状況に陥ることも考えられます。

本来、日銀の金利政策は日銀が独自に決定することができるはずですが、現実的に日本は米国側の管理下に置かれており、植田総裁の政策決定にも影響を及ぼしていることは間違いなさそうです。

利上げに関しては、既発債の含み損増加や国債費の急激な上昇など、日銀自身が抱える問題もあるため実施への道は険しいことが予想されます。

日本円はアジアのトルコリラとさえ揶揄されるほど、その金利政策の異質さは群を抜いており、マイナス金利こそ撤廃したものの、利上げの実施についてはいつまで引き延ばされるのかに、市場の注目が集まっています。

介入後徐々に上値を試すドル円相場

介入後のドル円相場は、恐る恐るではあるものの上値を試し154円台後半まで上昇している状況です。

介入が実施されても、ファンタメンタルズ的には変化がないため、早晩ドル円は上昇過程に戻ることが予想されます。

 

ただ、ここ最近の急落で、ファンド勢による多額の投げ売りが出ているため、すぐに値を戻す動きにはならないものと思われます。

介入のスタート地点となる159円、または158円辺りまで値を戻しても、財務省はそのまま見て見ぬふりをする確率は高そうですが、再度介入のリスクがあることは常に意識しておきたいところです。

2020年の時も、介入実施後にドル円は戻りを試すことになりましたが、結局152円手前まで戻すのに1年の時間を要してるため、今回も上値を試すのはこれで終了との楽観視は禁物です。