ここへ来て、連日史上最高値を更新し続け、米株に市場はかなり楽観的になりつつ、NYダウは年末までに3万ドルに到達するのではないかといった、強気な見方もされ始めています。
これまで相場を押し上げてきたのは、年間日本円にして50兆円を超える規模の米国企業の自社株買いと、M&AやIPOでの株の買い向かいが中心となっていたわけですが、いよいよこの動きがピークアウトしそうな状況で、2020年については大統領選挙年ではあるものの、米株がさらに上昇するのはかなり難しそうな状況になりつつあります。
こうした市場の変化は、年末から来年にかけての相場を占う上、非常に大きな材料になりそうで見逃すことはできません。
自社株買いはすでに今年15%減少
過去5年間あまり米国で株を最も買い上げてきたのは、投機筋でも年金でもなく、米国企業の自社株買いであったことは明らかです。
ゴールドマンサックスもそうした分析を行っていますが、平均して日本円で50兆円近い自社株買いがあった米国株式市場は、今年に入ってから既に15%もそのボリュームが減ってきています。
来年にはさらに、5%以上の減少が見込まれるということから、もはや株価を買い上げる存在が大きく下落しそうな雰囲気で、市場関係者はかなりこの状況に注目しているようです。
50兆円といえば、日銀が年間買い支えている6兆円、最近では満額買い付けていませんから、実に10倍近い資金の自社株買いの相場が、下落するたびに発動されていったわけです。
さすがに株価は大きく下げなかったと思われます。
むしろこれが上昇の原動力になっていたとすれば、ここからの相場が弱含む可能性は否定できない状況です。
また米国の議会も、企業経営者が自社株買いで株価を無理やり上昇させ、ストックオプションを多く獲得しようするスキームに、かなりの疑問を示し始めています。
一定の制限を施す法案を提案し始めていますから、このままでいくと2020年からは簡単に自社株買いができなくなるリスクも高まりつつあります。
仮にすべての自社株買いが失われた場合、株式購入需要は劇的に減少し、株価は大幅に下落する危険性があるのは間違いなさそうです。
IPOに対する市場の警戒感も高まっている
今年9月にIPOを実施する予定であった、WeWorkの親会社のWeCompanyが見事に失敗し、実は日本円で5兆円と言われた時価総額も、実際には3000億程度しかなかったことから、IPOに対する市場の期待も大きく失われる結果となっています。
これまでの金余りから、IPOには多くの資金が無防備に集まっていたわけですが、市場参加者はWeWorkのポンジスキーム的なIPOから、かなり新しいIPOに用心するようになっており、こちらも株価の上昇を抑える要因になりつつあるのが鮮明になってきています。
とにかくIPOといえば、何でも歓迎といった雰囲気がここ数年非常に強かったわけですが、WeWorkの一件から市場参加者はすっかり目を覚ましてしまったようです。
IPO市場は、今後かなり苦戦することが予想され始めています。
大統領選挙年だから継続して米株が上昇するとは限らない状況
足元では、月間600億ドルにおよぶFRBの短期債購入による資産拡大が確実にワークして、米株に資金が流れ込んでいることから、株価は史上最高値を連日更新する動きをみせています。
こうした動きも、来年2月に隠れQEが終了した時点で、終わりになるリスクは相当高そうで、個人投資家も来年の米株相場の変化を、十分にチェックしていく必要がありそうです。
米株の下落はとりもなおさず、日経平均の下落につながりますし、為替ではドル円が連動して下落する可能性は極めて高く、ここからの相場の状況からは目が離せないことになりそうです。
日米ともに中央銀行が動くことで、株価は一切下落を認めないといった人工的な相場状況が延々と継続していますが逆にそれが仇になり、大きな下落を呼び起こすことになる危険性もしっかり認識しておかなくてはならない時間帯がやってこようとしているようです。
恐らく株価が下落する局面では、またしてもFRBがQEの再開を宣言することになるのでしょうが、これは相当下落してからでないと発動できません。
暴落になるかどうかはわかりませんが、一定の下落が実現することが必要になりそうで、ここからの米株はかなり危なくなりそうです。