5日に発表された米国の7月雇用統計は、事前の非農業部門雇用者数予想が25万人増であったのに対し、前月比52万8000人増加となったことからほぼ2倍強の伸びを示し、家計調査に基づく7月の失業率は3.5%とほぼ50年ぶりの低水準となり、市場予想3.6%をも下回ったことから米国のリセッション懸念が大幅に払拭されることとなりました。
市場のエキスパートであるアナリストが出す予測の平均から2倍も改善した数値がでるというのも驚きの話ですが、実は労働市場はそれだけ改善しているということを示唆しているとも言え、9月のFOMCにもこの結果は大きく影響を与えそうな状況となってきています。
9月FOMCではまた75bpの利上げ確定か
今回の雇用統計の結果を受けて、市場では年内早々に景気後退から利下げが行われるのではないかといった憶測は完全に払しょくされ、逆に9月FOMCでは7月に引き続き75ベーシスポイントの利上げが実施されるのではないかという観測が高まりつつあります。
影のFRB議長とさえ囁かれるブレーナード副議長は、雇用が徐々に体裁することでインフレを抑止することは可能であるとの独自理論を展開して注目されていますが、現実は全く逆でFRBとしてはさらにインフレに対して積極的な利上げで対抗せざるを得ず、9月のFOMCでも7月同様75ベーシスポイント利上げが現実味を帯び始めています。
ドル円相場はようやく135円台を回復
8月に入ってから130円台半ばをつけるところまで調整したドル円は、今回のFOMCの結果を受けて大きく上伸することとなり久々に135円台を回復する形となってきています。
7月139円台半ばまで上昇してからは一貫して調整相場を示現してきましたが、上値のネックとなっていた134.500円レベルも完全にぶち抜いて上昇したことから、再度140円台を試す動きも期待できます。
FOMCの結果を受けて米債市場の金利は軒並み上昇をはじめていますが、10年債で3%台を回復することになればドル円はさらに上昇することになりそうです。
本来8月はそれなりの調整が起きやすい時期ですが、このまま9月に向けて再上昇するかどうかに注目が集まってきています。
週末の動きで134.500円~130円のレンジ幅は完全に上方向にブレイクしており、ここからは135円から140円へシフトした動きが強まりそうな状況です。
気になるのは台湾を巡る地政学リスクの高まり
夏休み期間中AI実装アルゴリズムの相場荒しにも注意が必要
ただ、同時に懸念されるのが台湾をめぐる中国の動きで、ペロシ米国下院議長の台湾電撃訪問を受けて中国は8月4日に弾道ミサイル9発を発射し、このうち5発は日本のEEZ=排他的経済水域の内側に設定されている中国の訓練海域に落下しています。
当然こうした状況を嫌気したのは為替相場で、ドル円は4日のNYタイムに大きく値をさげる展開となり、5日の東京タイムでもリスクオフの動きが強まりました。
5日にはこうした動きは一旦止まっていることからこれで終了となればいいのですが、7日まで演習は続く模様でさらに過激なパフォーマンスが出る可能性も排除できない状況です。
ただ、中国外務省はペロシ米下院議長と家族に制裁を科すと発表しており、果たしてどのような内容が制裁として実施されるのかにも注目が集まります。
ここからの8月相場は引き続き不穏な材料に直面する相場継続
8日からの一週間は本邦では大企業を中心としてお盆休みとなることから、相場の流動性はさらに低下することが予想されます。
8月に入ってから為替相場は市場参加者が限られ始めているにも関わらず妙にボラティリティの高い乱暴な相場展開が続いており、じっくりみていると人が裁量で取引しているとは思えないような動きが連日飛び出し、ドル円だけとってみても平気で1日2円余りの上下動を伴うような動きがでて、かなりのトレーダーがこれに引っかかって利益を失う展開となっています。
その理由は正確には判断できませんが、人がお休みしているときにAI実装のアルゴリズムが留守番役として相場を荒し始めている可能性が高く、週明けのお盆休みも同じような動きがでる可能性にも注意していきたいところです。
8月第一週では東京タイムがはじまる寸前にドル円が大きく売りを食らって下落するということが多く、あえて投機筋がこの時間帯をめがけて大きな売り玉を投入して相場をかく乱していることが伺えます。
こうしたアルゴリズムの取引は人がいなくても自動で行っているようですが、果たして結果として儲かっているのかは分からないままで、人が裁量取引ではやらないであろう強引で乱暴な売買が目立ちはじめています。
米国FRBの利上げ姿勢が強まったからドル円は上方向、と断定していると不意に振り落としにあう可能性もあるので、引き続き十分に注意した取引を心がけましょう。