主要中央銀行が積極的に緩和政策に乗り出したことを受けて、新型コロナの脅威を全く気にしない楽観的相場が継続しており、かなり悪化したハードデータをもろともせずに株価が上昇する状況が延々継続中です。

リアルな街角のミクロ景気を目の当たりにすると経済とまったく乖離して、どんなに悪い指標が発表されてもほとんど反応せずに買いあがる株式市場や債券市場には異常なものを感じさせられます。

いくら相場を否定してみても意味はなく、ファンダメンタルズを相場の先行きを占うものとして参考にしてきたトレーダーにとっては相当困惑する状況に陥っていることがわかります。

FOMCは政策内容を継続

Source Yahoo finance

30日、日本時間午前3時に発表されたFOMCの政策決定会合の結果は現状維持となりました。

さすがに出せるものは一気に出し尽くした直後の会合ということで、雇用最大化と物価安定の目標を達成する軌道に乗ったと確信するまで、この目標誘導レンジを維持することになりマイナス金利などを示唆する内容は飛び出しませんでした。

相場は殆ど反応しなくなっていますが、米国のハードデータはいよいよ続々と悪化をはじめており、あらためて今回の新型コロナの感染による影響が経済にもたらしている影響の大きさというものが可視化されはじめてきています。

市場は中銀による前人未踏の緩和措置を好感し、再度中央銀行バブルが再来することを期待するかのように株を買い上げており、金融市場だけみてみますとすでに新型コロナ禍は終焉を迎えたような錯覚を起こしそうです。

しかし、FRBは株価の一時的上昇こそ実現できたとしても重要な課題となる雇用の確保を本当に緩和だけで現実のものにできるのかどうかは疑問が残るところです。

すでに8日に発表される4月の雇用統計では失業率が二桁、下手をすれば20%に近づく劇的に悪い数字になる可能性がかなり高く、はたしてこうした悪化したハードデータの相場がどう反応するのかが大きく注目されます。

12年かけてようやく完全失業率の達成にまでこぎつけた米国経済ですが、新型コロナウイルスの感染拡大でたった1か月強でものの見事にもとの失業率をはるかに追い越すような猛烈な大失業時代を迎えることになり、大恐慌とも言えるような経済状況で株価がバブルの展開で、ここからさらに高値を目指すというのはどう考えても違和感のある話になりつつあります。

新型コロナワクチン開発で前のめりの異常期待相場

29日のNY市場では、米ギリアド・サイエンシズが抗ウイルス薬レムデシビルのウイルス治療での有効性を調べる臨床試験で患者のより速やかな回復を促したと発表したことから、異常な買いあがりとなり一時700ドルに接近するところまでNYダウの上昇がみられ、市場が新型コロナの収束と短期間での相場回復に大きな期待を寄せていることが見えました。

もちろんAIやアルゴリズムが積極的に買いを入れているからこそ、こうした妙な期待相場が示現してきていますが、人の裁量取引ではちょっと考えられないような楽観的相場が果たしていつまで続くのか非常に気になるところです。

例年5月相場はファンドの5月末決算なども絡んで決して上昇傾向にはなく、むしろSell in Mayに現れるように下落相場になりやすいものですが、今年のこの狂ったような上昇相場がどこで実態経済の強烈な悪化に足並みをそろえてくることになるのかが当面非常に重要な注目点になりそうです。

現在の経済状況は、1929年の大恐慌時をはるかに超えるものになりかねないかなり危機的なものになりつつありますが1929年の場合、一回目の下落から戻した相場がもとに戻るまでには実に3年近い時間がかかっています。

今回の新型コロナ禍の相場の動きはこの1929年の相場の推移に非常に似ており、しかも変動幅はさらにそれより大きくなっていますから、一回だけの暴落ですぐに回復してV字に再上昇を果たすと考えるのはあまりにも稚拙かつ拙速で、引き続き警戒を強めるべき時間帯なのではないでしょうか。

当面この違和感たっぷりで、ほとんどファンダメンタルズの内容が意味を持たない相場が継続することになるのかも知れませんが、どこかでいきなり大きな巻き戻しが起こることも想定しておきたいところです。