4月1日、巷ではすっかり新元号の発表に注目が集まりましたが、その陰で日銀の短観発表があり、決してよろしくない内容から市場では日銀による追加緩和を期待する声が高まりつつあります。
確かにFRBも一旦QTを中止して緩和的に措置に傾斜し始めていますし、ECBも利上げを年内棚上げにしていますから日銀にも緩和期待が高まるのはある意味自然の流れとなっているわけですが、果たして市場の期待に応えられるのかどうかが大きな問題になりそうで、25日という10連休直前の政策決定がその後の相場にかなり大きな影響を与えることが危惧されはじめています。
短観の内容では追加緩和の必要なしという日銀内部の意見も
日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査、いわゆる短観の3月調査では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数DIがプラス12と、昨年12月の前回調査から7ポイント悪化しています。この悪化は2四半期ぶりで、悪化幅は2012年12月調査(9ポイント悪化)以来6年3カ月ぶりの大きさとなっているのです。2012年12月といえばアベノミクスのスタート時期ですがら6年近く経済政策を行ってきたものの成果が明確に出ないまま逆走しようとしているようにも見えるわけで、かなりクリティカルな状況が示現し始めていることがわかります。
ただ、2019年度の大企業製造業の設備投資計画は前年度比6.2%増となり、昨年3月短観での18年度計画の増加率を上回っていますからそれなりの強さを伴う内容と日銀内では比較的楽観的な見方も広がっているようです。
株価重視の安倍政権も選挙対策で緩和を要請か
安倍政権と黒田日銀総裁はこれまでもにもかなり一体感を伴なった政策実施を行っていますが、7月の参院選挙に向けて株価の上昇・維持を重視する安倍首相が日銀による追加緩和を強く求めてくる可能性は否定できず、黒田日銀がどう対応するのかが注目されます。
市場ではいまさらまた消費税増税を見合わせてそれをネタにして衆参同時選挙が行われるのではないかといった見方も消えていませんが、2014年10月末消費税増税を見込んで先んじるカタチで黒田バズーカ2を撃った直後に増税延期を食らった黒田総裁は当時相当激怒したともいわれており、今回緩和が実施されるとしても政権からの増税に対するコミットがないと恐らく対応しないのではないかとも推測される状況です。また、実際に追加緩和を実施するとしても景気も株価も危機的に下落しているわけではないのですからここで大幅な緩和措置を出してくるというのもかなり難しさを伴うことになり、果たして現実味のあるものなのかどうかが疑われます。
小手先の実施でも見送りでも相場にはネガティブな影響
ここからは実際日銀がどういう判断を下すか次第となるわけですが、ETFの買い付け額総額といったものが飛び出しても日経平均を大きく引き上げることになるかどうかはかなり疑問が残ります。実際、米系のファンド勢はあまりにも人工的に価格が統制されている国内の株式市場に積極的に買いを入れてくる動きを全く行っておらず、せいぜい短期税が先物で上げて現物で売るといたディールを延々と繰り返しているだけですから通り一辺倒の緩和策で相場が一時的に上昇したとしても7月に向けて弾みをつけて上値を目指すとは到底思えない状況です。
一方4月の決定会合で緩和が見送られた場合、期待で買いあがった向きが売りに回ることから相場は下落に向かうことになりますが、その直後の27日から10連休で土日を除いても6営業日連続で現物の売買ができなくなるわけですから、先物のCFDや為替のドル円が代わりに売り込まれるリスクも高まることとなり、今回の日銀の政策決定会合の結果は日柄的にも相場に思わぬ影響を与える危険性が極めて高まりそうです。
トルコ中銀がトルコリラのスワップ金利を大きく引き上げて売りスワップを莫大なものにしたことから投機筋は一時的にトルコリラを売れない事態に陥ったのは記憶に新しいところですが、困った投機筋はトルコ株やトルコ債券を売りに回っており、今回日本株が売れなかった場合には逆に為替でドル円が売り込まれるというのは十分にありうる話となってきています。
正月のようなフラッシュクラッシュが起きるかどうかはわかりませんが、とにかく為替にも影響がでることだけは事前にしっかり認識しておきたいところです。