香港では逃亡犯条例の改訂をきっかけにした市民が総動員でデモを行っており、すでに参加者は200万人を超えるという30年前の天安門事件を彷彿とさせる状況にになってきています。香港政府トップが一旦謝罪して逃亡条例の改正施行を延期したことから騒ぎは沈静化したように見えますが、そもそもこの1国2制度を1制度に変えようとしているのは習近平であり、このまま問題先送りが解決とはいかない可能性がかなり高くなってきているようです。デモの映像からは市民運動というイメージが強く感じられますが、これは一種の体制変更の動きであり、そのような生易しいことで終結しないリスクのほうを十分に想定する必要がではじめてきています。
金融市場的にはBREXITよりもはるかに大きな問題
英国ではボリスジョンソンが次期首相になる可能性が高まっていることから合意なきEUからの離脱がまたしても再燃していますが、EUというブロック経済の中から離脱するかどうかの問題はあくまで自由主義圏の中の話であり、今回の香港のように英国から中国に返還された1997年7月以降22年間続いてきた1国2制度が終焉を迎えることになれば自由貿易と金融市場の制度が失われる可能性が高く、ここからの香港情勢が非常に危惧される状況になってきています。
香港ドルはどうなるのか?
香港では中国への返還後も人民元ではなく香港ドルが発行されています。これはHSBC,中国銀行、スタンダードチャータード銀行が行っており事実上英国が発行w続けているといっても過言ではない状態ですが、こうした自立権がこれから悉くはく奪されることになれば金融市場に与える影響はかなり大きなものになることが予想されます。
そもそも香港ドルは米ドルとのペッグ制を敷いていますが、香港の金融当局が支えきれない事態に陥れば香港ドルが大きく下げる可能性もでてくることから、為替市場としてはこの動向が非常に気になるところです。香港ドルの発行権がはく奪された場合、市場には相当な動揺が走ることになるのは間違いなさそうで、リスクオフから円高が急激に示現するといったことも想定しておくべき状況になってきています。
すでに香港の金利は大きく上昇をはじめており、不動産市場にもかなり大きな影響がでることが予想されます。なにより香港在住の富裕層や投資家が大挙して香港から逃げ出す事態になれば金融市場は崩壊する可能性が高く、本土で中国政府が支えているような状況とは全く異なる状況が示現するリスクが高まりそうです。
習近平はロシアから北朝鮮を訪問する予定で、香港の件については一切語っていませんが、このままですとG20 大阪に本当に来るのかどうかもよくわからないものがあり、月末にかけてこの問題が再燃する可能性もでてきています。
習近平欠席なら米国は高率関税実施強行か
こうなると月末のG20 開催と前後して米中首脳会談が実施できるのかにも注目が集まりますが、習近平欠席ともなればいきなりタリフマン・トランプが中国に対する追加関税を強行実施するリスクも高まりこの月末金融市場は想像以上に危険度が高まりそうな状況になってきています。
それにしても香港問題はこれまで市場が全く想定してこなかったブラックスワン的な材料で、一部にはかなり楽観的な見通しも出ているようですが、習近平次第では今のままでは済まない危険性はかなり高く、しかも富裕層が大挙して逃げ出す状況になれば相場にも相当な影響が出ることは間違いなさそうで、引き続き最大限の注意必要になりそうです。