9月第一週、米国ではレイバーデー以降は市場参加者が戻ることからここからの相場の動きが年末までの方向性を示唆するなどとも言われていますが、今年の相場はとにかく材料が多いところにもってきて、かなり政治的な材料で相場が二転三転することから予想以上に先行きを見通すことが難しくなりつつあります。

ドル円は先月末に底打ちしてから一旦上昇の過程に入ってきているようにも見えますが、月の後半にFOMCの政策発表を控え、依然として高率の利下げが実施されるという期待も高く維持されていることから一気にドル高円安方向には進みそうもない雰囲気もあり、週明けから上値と試すとしてもどんどん上昇するとは思えないレンジ相場における上値試しの域を出ない可能性も高まりつつあります。

ドル円1時間足推移

足元のリスクオン相場の材料はかなり微妙なものばかり

9月第一週の相場は次々とリスクオンに展開しやすい状況が示現することとなりました。

米中協議再開

まず米中の貿易協議が10月初旬以降再開されることとなったという中国側からの報道は相場をかなり押し上げることとなり、米株もドル円もこれで大きく上昇しています。ただ、冷静に考えますと9月実施が延期になったばかりか、10月1日にはトランプ大統領が怒りの報復措置をとった関税率の追加引き上げが実施されてしまう予定で、こちらは特段中止や延期になっていないことが気になるところです。

また10月に協議続行といっても話がまとまる可能性はまったくといっていいほどないのが実情で、アルゴリズム主導で恐ろしく買い上げる結果となっていますが、ここまで喜び楽観視する内容かどうかにはかなりクビをかしげる状況となっています。

香港政庁・逃亡犯条例を撤回

さらに香港で懸案となっていたデモは香港政庁が遅まきながら逃亡犯条例を撤回したことから、こちらもリスクオンの材料となっていますが、10月初旬開催の一帯一路の会議開催に伴ってとにかく空港を通常通り使えるようにするために中国側があえて持ち出してきた懐柔策にすぎないという見方もありますし、デモを主催する中心的人物は必ずしもこれで鎮静化するとは発言していないことから、引き続き衝突が起きるリスクは残っている点が気になるところです。

英国のBREXITさらに3か月延期、かつ合意なきBREXIT回避か

注目された英国議会とボリスジョンソン首相との応酬は、結果的に下院が合意なき離脱を阻止する法案を通過させるともに、EUとの調整が全くとれていないにも関わらず10月末の離脱をさらに3か月先延ばしにする法案も可決してしまったことから、ボリスジョンソン側は八方ふさがりの状況で、結局BREXITがどうなるのかまったくよくわからない混とんとした状況に陥っています。相場はBREXIT回避といったヘッドラインを受けてアルゴリズムが大幅にポンドを買い上げったことからその価格は驚くほど戻ることになりましたが、こちらも一時的な巻き返しがあったにすぎずさらに巻き返しの巻き戻しが起こりかねないところにさしかかっています。

ポンド円4時間足推移

市場の参加者が少なく相場が薄いせいなのか、アルゴリズムがヘッドラインに反応して買い上げる力は通用よりもかなり強力で、あえて投機筋がこうした巻き戻しをアルゴリズムをつかって仕掛けているとも見えますが、とにかくやり過ぎ感が満載の状態が続いています。したがってどのリスクオン要因もいきなり大きく反転する危険性は高く、これをトレントと呼んで上昇について行くのは相当警戒が必要になってきているといえそうです。

9月のFRB利下げ期待は91%なるも年末12月にはさらに0.5%下げ期待も

ここのところ9月のFOMCに対する利下げの過剰期待はかなり低下しており、足元のCME・FedWatchを見ても9月利下げ期待は91%と100%を割り込んだ状態た続いています。しかしながら年末までの利下げ期待は依然として高いものがあり12月段階でさらに0.5%、つまり年間で1%の利下げを期待する向きの確率は32.8%にも及んでいます。スイス中銀の総裁との議論に6日登場したFRBパウエル議長は今後の政策は適切に対応するなどと述べて具体的に利下げに言及することはありませんでしたが、市場の期待とFRBの実態との乖離は依然激しいものがあり、どこかでまた催促相場が始まる危険性をあらかじめ認識しておく必要がありそうです。

Data CME

9月相場は一方向に動かない可能性大

9月相場は過去20年の推移を見ますとドル円はとくに一方向に動くというよりは上昇と下落を繰り返すような相場展開が多いようで、足元でリスクオンから上昇したとしてもどこかで反転して戻るといったことも十分に想定しておく必要がありそうです。ある意味非常に難しい相場月となっているのは間違いなく、あまり安易に方向感を想定してしまうのではなく、日ごろに加えて一層用心深い取引を心掛ける必要がありそうです。

また12日にはECB理事会も予定されていますので、まずはここでの緩和内容を確認してユーロ主体にドルが上昇する可能性もあります。もはや各国ともに緩和と通貨安競争に陥っている感もありますが、その中で相対的にドルが買われるのか売られるのかをよく判断しなくてはならないタイミングとなってきています。