Photo AP https://www.politico.com/story/2019/07/31/fed-cuts-rates-amid-global-slowdown-1442621

米国FRBが10月のFOMCに先んじる形ではじめた短期レポ市場対策のPOMO・公開市場操作の恒久化に加え月額600億ドルもの資産の買入をQEと呼ばずに始めたことで米株市場はすっかり下がらないゴルディロックス相場の再来といった風情が漂い始めています。確かに短期のレポ市場で資金が枯渇し、短期金利が政策金利の4倍にまで跳ね上がるというのは異常なことですし、中央銀行としてこれを制御できたいないという懸念が市場に広がるのを何とか抑制しなくてはならないのはよくわかりますが、ちょっと景気が悪くなり株価が下落局面に向かいそうになっただけでここまでの隠れQEを実施する必要が本当にあるのかどうかについてはFOMCメンバーの各地区連銀総裁の中にもかなりの異論をもつ人物がいそうな状況で、今月末のFOMCでさらに市場の要求に応える形で利下げさえも実施するのか、あらためて様子を見ようとするのかに市場の関心が集まりつつあります。

過去の事例から見るとQEが実施される限り株価は下がらない

2008年のリーマンショック以降米国FRBは3度にわたるQEを実施しているわけですが、ひとつだけはっきりしているのはQEの実施期間中はほとんど株価が下がらないということです。さすがに市場に資金が潤沢に供給されますと行き場を失った資金は株式市場に集まるようになり結果として株価は下がらないという状況を示現することになるのです。また金利の低下は米系企業の一層の自社株買いを誘発することとなるため、こちらも株の下支えをすることになり株価安定の大きな材料として機能することになります。

ただしここから米株が大きく上昇するのかどうかも不明な状況

たしかに隠れQEの効果はすでに市場に出始めており、米株は10月という本来多少は下押しするようなシーズナルサイクルの中にあってもほとんど押し目らしい押し目を伴わないまま11月相場へと進んでいきそうな状況です。確かに下がらない相場が示現したことは間違いなさそうですが、そうかと言ってここから株式市場がどんどん上昇して年末を迎えるのかどうかはかなり不確定で、今の相場に買い向かうのが本当に正しいのかどうかには疑問も残るところです。なにしろリーマンショックからすでに丸11年以上経過しているわけですから本来ならばそれ相応の相場の下落があってそれをばねにして相場が戻りを試すという循環があってしかるべきなわけですが、あらゆる下落を中央銀行が人工的に阻止する動きに出てしまっている以上相場が自発的な力で大きく戻りを試すという動きは出にくいのもまた事実であり、下がらないけれど上がらない相場になる危険性はかなり高くなりそうです。またこのコラムでもすでにご紹介しているようにCLO市場が変調を来しそうな状況ですから、外堀から金融市場にネガティブな動きが波及する可能性も否定できず、緩和が進むから安心安全とは言い切れない状況です。

レイダリオ、サマーズは長期停滞を示唆

こうした状況下で世界最大のヘッジファンドの創設者であるブリッジウォーターのレイダリオは相場が大きく崩れることはないものの、1930年代の再来のように停滞が続くのではないかとの予測を口にし始めています。つまり大崩れはしないものの延々とぱっとしない状況が継続する停滞相場のはじまりということです。

長期停滞といえばクリントン政権における財務長官であったローレンスサマーズを思い出しますが、彼もまたここからの米国経済は長期停滞に突入するという見方を示しており、中央銀行の過度であまりにも予防的な緩和措置が経済を大きく停滞させるとみている点は非常の興味深いものがあります。

たしかに緩和を行っているのは中央銀行ですからこの動きに逆らう形で相場が大きく下落するためには何かまったく別の要因や社債市場が崩れだすなどといった市場が想定していなかったことが起因しないと大きな変化は見られないものと思われます。さてこうなると我々個人投資家はどのように相場に向き合うべきなのかが大きな課題になるわけですが、為替の視点で考えますと需給という点では相変わらずドル需要が高く、年末に向けてもドル買い需要が旺盛になるのはほぼ間違いなさそうな状況といえます。ただその一方で金利の低下から円高に振れる局面は非常に多くなっているのもまた事実でこの二つのファクターが足の引っ張り合いをすることでドル円は結果的に年末まで延々と狭いレンジ相場を継続することも想定して取引することが必要になりそうです。いずれ上方向か下方向に大きく抜けている場面に遭遇するものと思われますが、それが年末までに起こるかどうかはかなり微妙であり、延々とさらに狭い領域をレンジで行き来してクリスマスを迎えるといった最悪の状況もありそうです。こうなるとほかの通貨ペアを物色する必要がでてきますが、ユーロドルは簡単に買える状況ではなく相変わらず日足の200日移動平均線を下回る限り戻り売りがワークしており、こうしたいくつかの鉄板ネタをまわして年末までしのいでいくしかなくなっているのかもしれません。FX投資家にとってはかなりつらい時間帯が続きそうです。