発生当初、人から人へはうつらないなどとされていたコロナウイルス起因の肺炎は日を追うごとに感染者数が増加しており、既に中国の国家衛生健康委員会(NHC)は22日、新型コロナウイルスへの感染による中国国内の死者数が9人となり、感染者数は440人にまで登ったことを発表しています。
公表人口12億、実際には16億以上の国民がいるとされている中国でたった440人だけが発症しているとは到底思えない状況で、運悪くこの24日から旧正月に入る中国では国内だけでも4億人以上が移動し、海外への渡航者も700万人を超えると見られているだけに、このタイミングで一気に病気の感染が広がり、パンデミックへと発展してしまうリスクが高まりを見せています。
特にこの時期の中国人富裕層の出国先としては日本がもっとも多いだけに、国内でも感染者が爆発的に増えることを警戒する声も強まりつつあります。
米国のメディアも最初はあまり興味をもっていなかったようですが、シアトルで発症者がでたことから大きな関心が集まるようになっており、連日上昇してきた米株も下落するなど少なからず影響がではじめています。
マイナスの経済効果が確実にでるパンデミック
パンデミックといいますと、1918年に世界的なインフルエンザであるスペイン風邪が流行し、全世界で感染者5億人以上で4000万人が命を失うこととなり、ほとんど海外との行き来がなかった時代の日本でも39万人が死亡するという大惨事に見舞われています。
また21世紀では、やはり中国起因の鳥インフルエンザが非常に大きな問題になったことがありますが、どうやら今回の肺炎は人から人へと伝染し、さらに死に至ることが確認されているだけに、インバウンドの中国人から病気が広範にもたらされた場合には、国内でも相当な影響がでることが心配されます。
ちなみに2003年のSARSの場合では、中国自体で消費に大きな影響がでており、中国と香港のGDPの1%から3%程度の影響がでたと言われています。
パンデミック関連で上昇する株式銘柄なども散見されますが、トータルでみますと経済損失が非常に大きくなることがわかっています。
感染を嫌って多くの市民が引きこもり状態になれば消費全般に影響がでることになりますし、中国人観光客の来日が規制されるような事態になれば病気の感染は防げたとしても、インバウンド消費には大きな影響がでることになりますから、どちらに転んでもいいことはない状況になりそうです。
為替は広域的なリスクオフならさらに円高の可能性大
このコロナウイルス起因のパンデミックが為替に与える影響についてですが、日本でだけ感染が大流行するのであれば円が売られるということが十分に考えられるわけですが、今回の場合には既に米国でも感染者が見つかるなど広域的な病気の発症になるのはほぼ間違いなさそうで、世界的なリスクオフの動きになる危険性を心配すべき状況になってきているようです。
実際にドル円はすでに110円台から109円台へと下落傾向にありますが、これがどこまで下押しするのかは感染者数や死者数などとも密接に絡んでくることになりそうで、当面報道のヘッドラインから目が離せない状況になりそうです。
中国や香港の株式市場が比較的落ち着きを見せる場合には日経平均にも買いが入りやすくなっていますが、これは感染の実態とは何の関係もありませんから、いきなりリスクオフで大きく相場が崩れる局面が到来する可能性は否定できません。
あまりにも悲観するのも問題ですが、かといってこの段階ではまったく安心することもできない状況にあることだけはしっかり認識しておきたいところです。
ちなみにこの肺炎は、今のところ適切な治療法が見つかっているわけではありませんので、死者数が激増した場合には金融市場も想定外のパニック状態になる危険性がありそうで楽観視は禁物のようです。