新型コロナ感染はまだ明確に収束するといった状況にはなっていませんが、主要国ではロックダウンを継続すること自体が国民の精神的限界に近づいているようで、しかも飲食や小売といったビジネスは世界的に破綻の危機に直面していることから、一部でも再稼働せざるを得ない状況に直面している国が多いようで、相場はこうした経済再開の動きを非常に好感する動きとなっています。
しかし実態経済の悪化はまだまだこれからの問題であり、とくに新型コロナに関して新興国の経済と企業がダメージを被っていることについて、市場は全く織り込むことができないまま現在に至っていることが非常に気になるところとなってきています。
多くの新興国でここから格下げや企業のデフォルトが多発することになれば、世界経済に与える影響も相当なものになるだけに、楽観相場の状況は経済の実態と大きく乖離している感が否めません。
新興国市場の危機に注目すべき状況
先般原油の先物市場がマイナスになる可能性を早くから指摘してきたグッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏は、新興国の企業のデフォルト上昇の可能性を指摘していますが、残念ながら市場はそれを全く織り込んでいないとの警鐘を鳴らしています。
新型コロナ感染に関しては欧米とアジア圏の主要国での状況だけが取りざたされていますが、これは取りも直さず新興国市場に波及しつつあり、特に物不足や食料不足といったかなり深刻な問題が大きな社会問題を引き起こすことを同氏は指摘しています。
既に新興国からは猛烈な速さで資本が引き上げられ始めており、世界的にドルに資金がシフトしているのと並行する形で資本流出が進んでいる状況です。
とくに株、債券、通貨、ローン、貿易などあらゆる局面でその影響がではじめており、新興国自体のデフォルトの問題とともに新興国における多くの企業のデフォルトも大きな問題になる可能性がではじめています。
新型コロナが収束し、主要国の経済が再開すればすぐに景気はV字回復といった楽観的な見通しが市場では飛び交い始めていますが、実態経済の悪化と新興国へのしわ寄せは想像以上のものがあり、ここからは注意が必要になってきています。
新興国の格下げは為替にもろに影響
4月28日、格付け会社のフィッチ・レーティングスはイタリアの信用格付けをいきなりBBBマイナスに引き下げ、ジャンク債の一歩手前ぎりぎりのレベルに突然の格下げを実施しています。
イタリア経済が新型コロナウイルスの感染拡大で、著しく大きな影響を受けると予想されることから格付けを引き下げたというのがその理由ですが、この視点で見た場合にはここから多くの新興国の信用格付けが下落する可能性はきわめて高く、こうした動きは為替にも大きな影響を与えることが予想されるところです。
とくに国内の個人投資家にとっては、高金利通貨として人気の高い南アフリカランドを発行する南アフリカ、そしてトルコリラを発行するトルコの格付け動向はかなり気になるところで、これが引き下げられることになればいきなり通貨の激しい売りが起こるリスクも高く注意が必要になってきています。
トルコはすでに西アジアでイランを抜いてダントツで新型コロナの感染者が増加しており、経済への影響が非常に危惧される状況です。
金融市場はなぜか非常にこの新型コロナの感染に関しては楽観的であり、すでにポストコロナの話が随所で出回っていますが、リーマンショックは米国の金融業界が起因した金融市場パニックであったのに比べ新型コロナはウイルス感染による人、物、金融市場すべてを含めた破綻ですからその影響は計り知れないところがあり、感染が収束したからすぐに経済回復とはならない点に十分な注意が必要です。
アルゴリズムやAI主導の市場は、どうもそのあたりの感覚が大きく欠落しているように見えてなりませんが結局影響がでるのは金融市場ですから、ここからの動向については注意が必要になってきています。