9日の東京時間夜の8時過ぎ、ファイザーが研究開発中の新型コロナウイルスワクチンが治験の結果9割近くにその効力を発揮して、実用化が近いといった報道が流れたのをきっかけに米株市場は爆上、ドル円、クロス円も驚くほどの上昇を短時間に示現するという相場が展開することとなりました。
週明けの東京タイム、ドル円はどちらかといえばリスクオンから下値を試すかのような展開になりましたが、下げ切らずに103円台中盤付近でNYタイムのスタート待ちをしているときにこのニュースのヘッドラインが躍ったことから、まず株価が先物中心で大きく上昇しドル円もそれにつられる形でみるみる上昇、104円台中盤を回復してからは戻り売りをはねのける形で、さらにショートカバーを示現してとうとう上昇から2時間足らずで105.600円レベルにまで値を戻す展開となりました。
米株はNYダウが一時1600ドルの上げとなり、先物は瞬間3万ドルを超えるほどの勢いとなって、市場がいかにコロナワクチンの完成を待ち望んでいるのかをまざまざと見せつけるような展開となりました。
本当にすべての変異ウイルスに効くのかどうかはまだよくわからない
確かに従前からの開発品に比べると確実な効能を示すようになっているのは間違いなさそうで、各国各地域で変異したウイルスが多数見つかっていますし、国によって感染率や致死率も微妙に異なる状況となってきています。
本当にユニバーサルで効果を発揮するワクチンとして世界的に一気に普及できるのかどうかについてはまだよくわからないのが実情で、相場は若干勇み足の状況に陥っている感が否めません。
マイナス70度以下で保存、移送するという厳しい条件も普及の妨げ
このワクチンはその後の発表で、保存と移送のためにはマイナス70度以下を維持することが必要であることもわかってきており、輸血用の血液や血清のように一定の低温で保管すれば簡単に移動できるような代物でもないことが判明しはじめています。
こうなると確かに危機的な状況にある患者に対する処方はあったとしても、インフルエンザ対策のように気軽に広範な市民に処方できるようなものではないことも期待とはかけ離れたものになっていることは間違いありません。
相場ではIT株が売られバリュー株に資金が戻る状況に
このウイルス用ワクチン開発報道を受けて、株式市場ではいわゆる新型コロナで利益をあげられてきたNetflixやZoom、クラウドのマイクロソフトなどが売られ、映画会社や航空会社などが買い戻されるなどいわゆる勝ち組、負け組の状況に大きな変化が表れ始めています。
しかし、現状は冬のコロナ感染拡大の危機に依然として多くの国が直面しており、まったく楽観的な状況ではない点が気になるところです。
株式市場は常に先を取り込むことからこうした動きになるのでしょうが、NASDAQはすっかりこの報道での相場の上昇から取り残され、IT株が引き続き売られてしまうという大きなパラダイムシフトの影響を受けています。
欧州圏では感染が激しさを増しており、殆どの国がロックダウンを再実施せざるを得ないところにあり、大統領選が終わった米国でも感染者数は1日10万人を簡単に越すほどの感染拡大に直面していますから、ワクチンができそうだというだけの情報でポストコロナをにらんで株の売買の矛先が変わるというのはあまりにも急ぎすぎの感がありますが、それも止められない状況です。
為替は初動でドルが大きく買い戻されたことからドル円、クロス円とも軒並み上昇しましたが、いきなり価格水準が大きく変化してしまったことから、この先そのまま上昇過程に残るのか再下落するのかが見極められない状況です。
ワクチン相場というのはなかなかお目にかかれるものでもありませんが、引き続き相場の模索は続きそうです。