先週、感謝祭前にバイデン新政権が主要閣僚候補を発表しましたが、まだ正式決定ではないもののイエレン前FRB議長が財務長官に就任することとなったことから、米株相場は非常に好感しNYダウはとうとう3万ドルの大台を突き抜ける動きとなりS&P500も年初来高値、NASDAQは感謝祭明けにやはり史上最高値を記録しています。
米国ウォール街では左寄りで、金融市場に極めて厳しい対応をとるエリザベスウォーレン上院議員が財務長官に指名されるのではないかと警戒していただけに、イエレンの登場で胸を撫でおろす状況になっています。
バブルの守護神として市場では大人気のイエレン
イエレン前FRB議長はもともと相当な学者肌で、サンフランシスコ地区連銀の総裁など数々の要職を経てFRB議長に就任しており、労働問題に詳しく市場との対話も丁寧に行う存在として知られています。
トランプの大統領就任であえなく一期でお役ご免となったわけで、在任期間中暴落の洗礼にも見舞われることなく過ごした数少ない存在であり、しかも景気の回復がみえてきても株価の下落を恐れてなかなか利上げができなかったという妙にチキンな性格の人物であることから、ウォール街ではバブルの守護神として高く評価されています。
しかもパウエルは自らの議長時代の理事で親和性は極めて高く、バイデンが大統領に就任しても上院が共和党多数で抑えられると大統領令を出す以外ほとんど法案が通らずいきなり最初からレイムダック化する危機がある中で、唯一パウエル現FRB議長とのタッグで相場を支えるキーパーソンになることが期待されている状況にあります。
このまま市場ではコロナバブル相場が少なくとも来年の6月位までは継続するのではないかという楽観的な見方が強まっており、すでにいささかやり過ぎの感もではじめています。
このコラムで過去にもたびたびご紹介していますCNNの恐怖と欲望指数はすでに92という楽観状態を示していますが、だいたいこの数字が90を超えますと必ず調整が入るのが世の常で、年末に向けて機関投資家のリバランスも含めてそれなりの調整がはいることになるのかどうかにも注目が集まるところとなっています。
民主党政権での財務長官の課題は相当豊富で困難な状況に
株式市場は目先の相場のことしか見えていないようで、バイデン政権がスタートするとこれまで口にしてきた公約はかなりハードルの高いものが多く、イエレン新財務長官は就任早々から荷の重い役割を果たすことも観測されはじめています。
コロナ対策は与野党対立から発動が遅れており、年末には一旦給付金も切れるというクリティカルな状況ですし、バイデン政権が原資も確保できないまま公言してきた失業給付の積み増しも結局国債発行で賄う必要があり、いきなりMMT的施策に突入しなくてはなりません。
また、税財政改革では4兆ドルという荒唐無稽にも見えるインフラ投資に加え、民主党左派の連中が強く要求してきた企業、富裕層の増税の実現の問題があり、共和党といかに協力を実現するかのきわめて政治的な調整も待ち構えています。
さらに銀行改革ではトランプがかなり後退させてしまったものを再度巻き返し、とくに銀行と証券の分離といった民主党左派エリザベスウォーレンなどが強く主張してきた改革を本当に実現できるのかといった大きな問題も抱えることになります。
もともと学者のイエレンが、こうした政治的な駆け引きや対応を本当いうまくこなしていけるのかどうかには疑問の声もではじめており、バブル相場の延命もこうした課題にどのようにイエレンが処理していけるか次第という部分ものこされている状況です。
相場は明らかに超楽観の浮かれ気味な状態を継続中で、本当にこれが続くのかについてはもう少し真剣に見極める必要が出てきているようです。