最近金融メディアでよく目にするFRBの翌日物リバースレポが、6月末に過去最大レベルにまで拡大するという稀な状況が現れました。

この翌日物のリバースレポ金利は0.05%に引き上げられていますが、今のところまだ低いにも関わらず利用額は大きくなる一方です。

日本市場ではこの翌日物リバースレポの需要が大きくなっていることについてほとんど報道がされておらず、どういう意味なのかについてもあまり知られていませんが、果たして米国の金融市場では見えないところで何が起きているのか、今回はその翌日物リバースレポについてご紹介します。

そもそもリバースレポとは

リバースレポとはFRBが実施する金融調節手法の一つです。

金融機関からリクエストを受けたFRBが翌日再び買い戻す条件付きで保有国債を渡し、代わりに金融機関から資金を受け取る仕組みとなっています。

6月のFOMCでは超過準備の付利金利(IOER)と翌日物リバースレポ金利をそれぞれ5ベーシスポイント引き上げることに決定し、IOERと翌日物リバースレポ金利はそれぞれ0.15%、0.05%に引き上げられました。

過去の金利から考えれば低めですが、本来貸出先や運用先に利用した方が利益を確保できる可能性があるのにも関わらず、大手銀行が積極的に翌日物のリバースレポを利用するのにはそれなりの理由があると考えられます。

違った見方をすれば、表面上は緩和を止めないFRBが金利と並行して翌日物のリバースレポの運用資金を引き上げ始めており、この状況がこの先どうなるのか市場の関心も高まっている状態です。

これが具体的に金利を上げない金融調節政策として動くのであればFRBによる新手の手法と言えますが、全く異なる動きの前触れである場合には相当な注意が必要になります。

バーゼル3の正常運用が影響を及ぼし始めている可能性も

バーゼル3は新型コロナの影響で運用開始が遅れていましたが、今年7月から正式に運用を開始しました。

金融機関はリスクの高い融資がリスクウエイトの上昇により不良債権扱いになることから、そういった資産の運用残高を減らし始めており、その分をFRBが提供するリバースレポに預けて少量の資金を増やしています。

これはすでに民間金融機関の融資先が限られ始めていると言えますが、危ない投資からの資金の引き上げという信用バブルから、収縮へ転換が始まっているとの見方もあり微妙なところです。

今のところ急に金融市場の情勢が激変するとは考えにくい状況ですが、FRBは1ドルの経済成長のためにすでに10ドル以上、最も多くて17ドル近い資金を市中に入れていると言われています。

ここからまだまだ緩和措置が続くとしてもすでに市中への資金の広がりが限界まで来ており、さらに借金をして投資をするというMargin deptが限界に来ていることを示している可能性も考えられます。

しかしこれまでの緩めるだけ緩めてしまった金融緩和と莫大な金額投入の逆回転で、突然信用収縮が市場に広がってしまいミンスキーモーメントが起きるかもしれないことが非常に心配です。

7月のFOMCが今週に開かれますが、市場では依然としてテーパリングを協議し始めるのではないかといった憶測が飛び交っており、その度に金利は上昇、ドル円も上方向に動く相場となっています。

ただここからさらに景気を安定させようとしているバイデン政権にとっては、単純にFRBにインフレ対策と称して利上げを行われてしまうと政策が台無しになるので、そう簡単にテーパリングや利上げが起きるとは思えない状況です。

そんな中でのリバースレポ利用額拡大がこの辺りとどのような整合性があるのかについては、しっかりとチェックしていく必要があると思われます。