米国ではかねてから略奪事件の横行がSNSにより発信されていましたが、このたび集団略奪が米国経済をも揺るがしかねない状況にまで悪化していることがメディアでも報じられています。

足元では若者たちが大挙し小売店に押しかけては金品を強奪する行為が、全米で広がりを見せており、特に被害の大きいペンシルベニア州のフィラデルフィアでは、100名以上の若者たちが白昼堂々とアップルストアに押し入るという事件が発生し世界中に衝撃が走っています。

 

Footage at Philadelphia trough YouTube

 

昨年米国内で発生した万引きや窃盗による小売店の被害額は、日本円にして14兆円にも上っていますが今年の被害額はさらにその2〜3倍と予想されています。

プロポジション47の施行が略奪事件横行の元凶に

この集団略奪事件多発の背景には、2014年にカリフォルニア州で民主党系州知事の判断のもと成立した、950ドル(当時の相場価格で約10万円)未満の万引きや窃盗を重罪に問わないという州法が大きく関係していると言われています。

「プロポジション47(略称プロップ47)」と呼ばれるこの法改正案は、2014年11月4日に実施されたカリフォルニア州の住民投票により可決成立した法律で、正式名称を「住環境・学校安全法」と言い、カリフォルニア州における犯罪の再分類を行うことを主旨としています。

もとは窃盗に科せられる刑の減刑という人権的な意味合いのもと実施されたのですが、実際は950ドル以下の窃盗はほとんど無罪と広範に認識される結果となり、この法律こそが略奪行為をアメリカ全土へ拡大させる火種となってしまったのです。

同様の州法が民主党系の州知事のいるエリアに拡大したことから、こうした略奪社会の元凶を作り出したのは民主党のせいだという厳しい非難も起こりつつあります。

足元では都市部を中心に米国各地で略奪が多発しており、今年は特に状況が深刻化している状態です。

大手小売りチェーンが略奪被害のターゲットに

現状では、ホーム・デポやターゲット、ウォルマート、ローリーズなど、大手小売チェーン店が深刻な被害を受けています。

同じく大手小売りチェーンとして知られるターゲットは、店舗スタッフと顧客の安全を考慮し4州の9店舗が閉鎖に追い込まれ、利用する消費者側にも深刻な影響が及んでいる状態です。

窃盗被害が出始めた当初は、換金しやすいブランド品などが標的となっていたのに対し、現在そのターゲットは日用品や食料品にまで拡大しています。

環境に対応する役人の増加を謳う州では警官の削減政策を実施していることが多いため、結果的に治安が悪化し、各店舗でガードマンを増加し対応するも手が回らないのが現状です。

先日各地のアップルストアで発売されたばかりのiPhone15は、まるで無償配布会が開催されたかのごとく強奪の格好のターゲットになってしまったようです。

 

襲撃された米アップルストア

 

ただアップル側もその状況をただ見ていただけではなく、店頭を離れるとiPhoneにロックがかかる盗難対策機能を講じていたため、それを知った窃盗団により多くの盗品が店頭に捨て去られるという光景も随所で見受けられます。

米国ではこれから迎える感謝祭シーズンが一年間で最も個人消費の多い時期であるだけに、この状況が消費者にどれだけ大きな影響が出るのかを危惧する声も高まっています。

経済指標だけを見ればインフレが進行しているものの、米国の景気事態はそれほど悪くないというのが多くのアナリストの見立てとなっていますが、小売の現場で実際に多発しているこの惨状は、バイデン大統領も見過ごせないほどの事態となっています。

バイデン大統領支持者でさえも相当数がすでに我慢の限界に達している状態であろうことから、今後の対応が大統領の支持率に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。

今後は、経済指標の悪化や金融市場への大きなダメージも避けられない状況と言えそうです。