金融庁は3月末月末より、地方銀行など国内のみで業務を展開する本邦金融機関を対象に、国債や外債、預金、貸出などの金利リスクについて、銀行勘定の金利リスク(IRRBB)という名称の金利リスク規制を実施します。為替取引をするものにとっては全くなじみのない世界ですが、これは2017年に導入を決定しているものですでまずはメガバンクなど大手を対象として金利変動時の損失について算出方法を厳格化し、自己資本の20%を上回った場合には、同庁と金融機関が協議して対応策を決めるというものです。
この3月末からいよいよ国内基準行、つまり地銀などの銀行にも適用範囲が拡大されるというものです。
新規制では円建ての場合は金利が上下1%幅、ドル建ての場合は同様に上下2%幅で変動した場合にどれだけの損失が出るか算出を求めることになります。国債については金利変動が小さかったためこれまでは金利リスク量は僅かでしたが、新基準では通貨毎に変動幅を設定することで金利リスク量が大きくといった具合にリスクを厳密にチェックすることになるわけです。
国内金融機関はジャンク債に近い市場において既に池のクジラ状態
この規制、問題はすでに国内の金融機関が本邦では超短金利がないことから生きていかれずに海外の債券にイールドを求めて買いに走る動きが続いており、気がついてみるとジャンク債ぎりぎりのBBB格の社債やローン担保証券など中身を分解するとほとんどジャンク債だけで組成されたようなものを大量に保有し、市場のマジョリティを構成してしまっている中で施行されることから、各金融機関の保有債券の見直しが一気に進みますとそれだけで相場を崩壊させかねない状況にある点が非常に危惧されるところです。この制度導入後は問題が生じたときには金融機関と金融庁が深度ある対話を行って対応策を決めるとされています。どうすると深度があるのかよくわかりませんが結局のところこの手のリスク債券を保有しすぎている場合には結局売却して一定量を手放す、もしくは全数を売却して撤退することを余儀なくされることになるのは火を見るよりも明らかでむしろこの売却行為自体が米国の社債やCLOをはじめとする債券市場の大幅下落から信用収縮が拡大して金融相場全体の暴落につながる可能性が危惧されはじめているのです。
金融庁は農林中金の大量CLO保有を夏まで継続させる方針
既に金融庁はCLOを大量保有するとされている農林中金がいきなり売却に動くのを一旦静止して夏までの継続保有を認める方針のようです。80年代から90年代初頭にかけてジャンク債取引で一世を風靡したマイケル・ミルケン率いるドレクセル・バーナム・ランバートは、当時のジャンク債でほぼ90%近くを取り仕切るといった寡占的状況を確立していましたが、結局市場の流動性をいったものを寡占で維持できなくなり結果自社が売ると相場が下がるというとてつもない状況に陥って破綻したという厳しい過去がありました。
世界のCLOのマーケットキャップはほぼ7000憶ドル・日本円にして77兆3500億円程度とみられますがそのうち農林中金は2018年12月末現在でほぼ6兆8200憶円強を保有しており、よせばいいのに昨年10~12月期にわざわざ100憶ドルも買い増しているのです。米国系の金融機関もイールド確保のためにそれなりにCLO資産を保有しているとは見られていますが、この保有額はすでにJPモルガンやウエルズファーゴを優に上回っており、CLO市場での農林中金の買いが市場全体を支えているという極めて重要な存在になりつつあるようです。
今のところ格付けの高いAAA格のものだけを保有しているといわれていますが、実際はジャンク債をばらして新たな格付けに組成しなおした、いわゆるサブプライムローン証券とほとんど同じ構造ですから、格付けの悪化や債務不履行が加速すればとんでもないことに陥り、信用収縮が社債市場などに広がればリーマンショックを上回る暴落相場が示現しかねない状況であるたけにここからのCLOやBBB格級の社債市場の動向には為替のトレーダーとしても相当な注意が必要になりそうです。