内閣府が5月20日に発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では2.1%増となりました。市場の事前予想を裏切る形で2四半期連続のプラス成長となっています。10~12月期は年率換算で1.6%増。住宅投資や公共投資の増加がプラス成長に寄与しています。民間予測の中央値は前期比0.1%減で、年率では0.3%減ですからかなりいい数字になっていることがわかります。なにかと問題の多い内閣府がまとめた数字ですから、消費増税用に弄っているのではないのかという疑いさえ感じられるわけですすが、この数字を見る限りは秋の増税はもはや間違いなく実施されるものと思われ、金融市場のここからの反応に関心が移ることになります。

2018年の実質GDPは前年比0.6%増

今回同時に発表された2018年度のGDPは実質で0.6%増、名目で0.5%増ということになり、戦後最大の景気拡大などと言われましたが、その中身はまったく大したものではない状況が示現することとなりました。景気拡大を謳いながらこれだけ数字が低いというのも珍しいことですが、この景気判断を行っているのも内閣府ですから、政府の忖度が過ぎているだけで実際には戦後最長の景気拡大にはなっていない可能性も疑いたくなる状況です。

安倍首相はしきりに悪夢の民主党政権時代と口にしますが、ほかの政権を揶揄するのはどこの国も政治家も似たようなものですからある程度仕方ないとしても、実質ここ10年余りの歴代内閣時の実質GDPの数字を見ますと、安倍政権以降は決して数字がよくなっておらず、これだけ日銀が国債を大量に市中から買い集め、ETFを買入れ、GPIFが年金原資を大量に投入して株価を買い支えても景気はほとんど改善していないことがよくわかります。もちろん株価や土地の値段などはいくら上昇してもGDPに組み入れられる部分は皆無ですから仕方ないですが、2013年から始まったアベノミクスはまだ終わっていないものの一体何だったのかが非常に問われる状況になっているといえます。

そもそも政権はその時々でリーマンショックのような外的要因に見舞われたり東日本大震災のような自然災害に直面したりするものですから、経済政策の成果が短期間で示現するようなものではないのが実情で、特定政権時の政策を悪夢と呼ぶこと自体に無理がありそうです。

株は市場先取りの鏡

こうなると10月の2%増税の実施はもはや不可避の状況になってきているようで、為替にも影響を与える今後の日本株の推移がどうなるのかが注目されるところです。足元ではヘッドラインのテキストを読むCTA系のアルゴリズムがプラスに受け取って相場は上昇していますが、可処分所得が減少している状況下では下手をすると増税前の駆け込み需要すら出なくなるという最悪の事態も想定されるだけにとくに内需関連株の動向に関心が集まりそうです。

過去3年以上のGDPの数字を見てみますと、GDP全体を押し上げてきたのは企業の設備投資や政府支出が中心でGDPの6割を占める個人消費が強く推移して上昇してきているわけではないことがGDPの拡大と国民の生活実感との間に乖離を作り出しているものと思われます。
またとにかく国内ではなんとしてもGDPを大きく見せるためにいらぬ努力をしていることも実態経済を反映した数字になっていないわけで、本当にこの国のGDPをそもそも信用できるのかという大きな疑問も依然ついて回る状況です。
いずれにしても株価は市場を先取りして織り込んでいく鏡のような存在ですから、秋以降景気が悪くなることが現実化するならばそれよりも前倒しで相場を下落させることが容易に予想されるだけにかなり注意が必要です。

ドル円は一旦110円台を回復していますが、果たしてここからどこまで上値を試すことができるのかも注目されるところです。