5月の連休明け辺りからトランプのツイートでいきなり動き出した感のある為替市場ですが、20日からの5日間もそれがさらに加速するような相場となってしまいました。ニュースのヘッドラインをいち早く取り込むアルゴリズムのおかげか、悲観的なニュースがでても楽観的なニュースがでても相場が過剰に反応することからドル円などは毎日日替わりで上げたり下げたりする始末で殆ど方向感はなく、次のトレンドが出るまでは当分こうした動きが続きそうな状況です。
週明けも政治問題が相場を動かす要因に
ファーウェイ問題
5月20日、グーグルがファーウェイからアンドロイドのライセンス権をはく奪し同時にサポートも強制終了する旨の報道が世界を駆け抜けました。
これはトランプ大統領によるファーウエイの事実上の禁輸措置に同調したものであり、その内容はある意味でさらに踏み込んだものとなったことから市場の反応は一転してネガティブになり、とくに株式相場を直撃する展開となりました。
中国企業であるファーウェイは米国における国家安全保障上の脅威であるというトランプの禁輸措置に決してトランプよりではないはずのグーグルが独自判断により同調する動きをいち早く見せたことは非常に注目される状況で、これがきっかけとなってファーウェイとの取引停止を持ち出す企業が多くなり、米中の貿易協議が実は貿易分野の問題ではなく米国の安全保障上の問題であることを改めて印象付ける一週間となったわけです。
米国とイランの問題
国内ではトランプの来日により相撲観戦だ六本木の炉端焼きだという話だけがクローズアップされてあまり注目されなかった中東情勢がいよいよ緊迫化しています。
戦争大嫌いのはずのトランプもいよいよイランとは一戦を交えそうな状況で、イランに対し 核放棄に向けた交渉の席に付くよう促した上で、両国の軍事衝突の可能性を排除しないと語って戦争のリスクが高まりを見せています。
こちらはかなり本気の様子を見せており、対北朝鮮で強行路線がそれなりの成果をあげていることからトランプは同様の方法でイランを恫喝しようとしていることが窺われます。トランプはユダヤ系の支持層やキリスト教の原理主義系の組織からの支持を集めており、政治献金もこの層からが潤沢であることからどうしても支持を維持するためにイランを叩くことが必要となっているという見方も強くなっています。一部報道では米軍の派兵の話も顕在化しており週明けにさらなる動きがでれば相場はさらにリスクオフになりそうな状況です。
メイ首相とうとう辞任表明
一方欧州ではこの週末から各国で開催されている欧州議会選挙よりも英国メイ首相の辞任表明の報道のほうが大きく扱われるようになってしまいポンド円は一旦21日にドル円に引きずられるように上昇したものの週後半にむけて延々と売られる展開が続きました。しかしメイ首相辞任はなんら解決に向かう問題にはなっておらず、BREXIT問題を扱う後継者が一体誰になるのかが不透明になったことからさらに不安定な動きがでそうな状況でとくに一旦は消えたかに見えるハードBREXITのリスクがここへ来て一段と高まるという状況が再現されはじめています。次期保守党の党首は7月末までに新首相に就任する見込みと見られますが、こちらも当分ヘッドラインニュースに相場が踊らされそうな状況です。
このように市場を動かす材料は満載ですが、どれもリスクオフになりやすく、しかもこれまでのようにドルと円が両方買われる形から円が先行して買われる動きも徐々に強くなっているため週明けは状況次第で円高が進む可能性が高くなりそうで注意が必要です。
主要通貨は方向感のない動きが継続
24日のNY市場ではドル円は3日連続の続落となり週初110.67円近辺まで上昇したもののそれ以上を狙うことができずに失速して結局週末は109.31円レベルにまで下落して週の取引を終えています。
ユーロドルは米債の利回りが低下したこともあり逆に続伸し1.1203ドルまで上昇して引ける展開となりました。英国と米国が月曜日休日となることから3連休を前に、ポジション調整目的のユーロ買い・ドル売りが出た模様でこちらも調整的な動きとなりました。
ポンドドルは、メイ首相辞任を受けて次期首相のボリスジョンソンが合意なき離脱を辞さないと強気の発言をしたことから失速したもののドル売りが全般に優勢となったことから一転して強含むという展開となっています。
週明け26日からの5日間は5月最終週となりますので、ヘッジファンドの決算などもあり株も為替もイレギュラーな動きがでることに注意が必要ですし、なによりここでご説明しました通りかなり政治的な材料で相場が動かされそうな状況でリスクオフが想像以上に進めば円高が加速することに注意が必要になりそうです。
週明けにはトランプ来日で日米首脳会談も予定されていますが、為替市場への影響はどうやら限定的なようでやはりほかの材料による相場の変動に注視すべき一週間といえそうです。