UKのメイ首相がとうとう辞任を表明しました。自らの手でBREXITを実現できなかったことからかなりのくやしさがそのまま表情に滲み出る会見となったわけですが、心情的には同情すべき部分が多いことは確かですが、冷静にこの3年間の政治家としてのメイ首相の動きを見ていますと、やはりBREXITという一大ディールに向けてどのようにマイルストーンを設定しそれをクリアしていくかというプロジェクト発想のビジネスオペレーターでは全くないという側面もかなり露見してしまい、鉄の女サッチャーを超えたのは専ら気持ちの部分だけではなかったかと思わせる時間が経過してしまったことは紛れもない事実です。
BREXIT投票結果日がポンド円の過去3年の最高値
いまさらながらにポンド円の2016年6月24日(日本時間)のBREIT投票結果を振り返ってみますと、この日市場ではメディアの報道を含めて離脱回避の可能性が高いという楽観論が広範にいきわたることとなり投票終了直後にはポンド円は160.090円まで買い進まれる動きとなったのは記憶に新しいところです。
ちょうど保管してあったポンド円の1分足チャートを見ていただくとわかりますが、24日の東京タイム、8時半前にいきなり147円台まで下落したポンド円につられてドル円も大きく値を下げることとなりました。投票結果が出る前にいきなり13円下がるのはなかなかのもので、朝6時にリカクしておしまいにしていれば九死に一生でしょうが、昼までポジションをもっていたらBREXIT離脱賛成過半数という報道が昼前に飛び出し、134円台という実に半日で26円安を食らってかなりの人たちが撃沈したことは間違いない状況です。
その後のポンド円の今日に至るまでの3年間は2018年ごろからは解決の方向性がまったく見えなくなったことから投げと踏みの応酬が延々と続く形となってしまい、あくまで結果論ではありますが、ボリンジャーバンドの週足以上で+2シグマ以上に戻したところを何度も丁寧に売っていれば、ここまでにそれこそ3年間類型で100円近い利益がでたのではないかという動きを見せることになったわけです。
もちろん政治が絡む世界ですから、BREXIT回避という驚くべき解決案が飛び出すことも想定されたわけですが、意外にテクニカルに忠実に売買し、危ない時にはストップロスなりトレーリングストップを置くなりして対応すればこの3年間ポンドでも結構利益を確保できた可能性が高いことがいまさらながらにわかる次第です。
とうとうこの3年でポンド円はBREXIT投票結果の暴落日の高値まで戻ることできないまま時間を費やすことになっており、ここから再度高値を抜けることはもはや至難の業になりそうです。
これからのポンドは10月に向けてさらに悲観的状況に
キャメロン元首相が英国のEU離脱のための国民投票を公約に入れてからすでのまる6年半近く、猛烈な為替相場暴落を招く結果となったBREXIT投票から既に3年を経過したわけですが、最初はそれなりに時間があるように見えたのに蓋を開いてみたら夏休みが終わりかかっているのに何も宿題ができていなくて真っ青の子供とどう手伝うかも判らずに怒り心頭の両親が最後に掴み合いの喧嘩をしそうな時間帯が延々と続き、とうとうメイ首相退陣ということになってしまったわけです。
保守党という政党の政治的な分析力の低さとベストなオペレーション設定をあらかじめ全くできなかった実務能力の低さだけが目立ったBREXIT騒動ですが、正直なところメイ首相もどうBREXITを進めていくのかというパースペクティブな視点に欠け、とくにアイルランドとの国境問題が物理的に最大の難問であったにも関わらず最後の最後まで何のソリューションも提示できないまま撃沈してしまった事実はかなり大きなもので、仮に後継者にボリスジョンソンが選ばれてもこの厳しい問題はなんら解決がつかないまま10月の期限を迎えてしまいそうです。
ボリスジョンソンは交渉がついてもつかなくても10月にはEUから離脱すると豪語しはじめていますので、ここからのポンドも10月に向けて受難が続きそうです。
総選挙となればさらに混沌とした展開も
保守党がそのまま政権与党にならないケースも考えられ始めています。足元では保守党と労働党といった二大政党の支持率がみるみる低下しておりナイジェル・ファラージ氏が率いるブレグジット党や、自由民主党、スコットランド民族党(SNP)、緑の党などの党勢がかなり強まっています。とくにブレグジット党への支持率は驚くほど強まっており、こうした政党がまさかの主導権を握った場合完全に合意なき離脱が決定する可能性も高まりそうです。
ただこの総選挙は定数650の下院の3分の2が選挙実施に賛成するか、内閣不信任案が可決され、その後14に火以内にどの政党も下院で信任を得られない場合にだけ実施されるわけですから意外にハードルが高く、しかも7月にそのようなことをやって新内閣ができれば完全に合意なき離脱に突き進むことになりかねない状況でまったく明るい解決策とはなっていません。
BREXIT中止はもっとも低い確率
メイ首相が辞任前に突然国民投票を再実施してみてはと言い出してまさかのBREXIT中止もありえるのではと期待させられましたが、いまのところ国民投票で民意を再確認する可能性はまた低くなってきているようで、こちらも現状では望み薄です。
このように完全に政治イベント化してしまったUKのBREXITディールはもはや一時的なポンドのショートカバー、買戻しがでたとしてもそこから先はまた売られるリスクが非常に高そうで、10月にむけてそのタイミングをテクニカル的にも合致するところで売り仕掛けしていくことが利を生みそうな気配になってきています。
いずれにしてもあまり断定せずに状況を見ながら柔軟に売買していきたいところです。