先週末ムーディーズがトルコの信用格付けをBa3からB1にいきなり引き下げたことから終了間際のトルコリラは大きく下落する動きとなってしまいました。
当然週明けの東京タイムでも大きな下落となってきており、すでに年初のフラッシュクラッシュを下回る状況になってきています。
今回の格付け引き下げは昨年8月以来の国際収支の悪化とともに債務不履行リスクが高まっているのがその理由となっていますが、このままデフォルトが現実のものになった場合にはトルコリラの価格は壊滅的に下落することが予想されるため、スワップ狙いでトルコリラのロングポジションをとっている本邦の個人投資家は相当ここからの取引を慎重に行うことが必要になりそうです。
イスタンブール選挙は23日に迫る
前代未聞のやり直しとなったインスタンブール市長選は23日に迫っていますが、改めて野党候補が当選してしまった場合エルドアンが一体どうするのかにも大きな注目が集まります。前回とは全く異なる形で与党が大差で当選してもかなり問題は大きくなりますし、逆にここで再度混乱が起きた場合相当国際社会からの非難も強まりそうで一段とリスクが高まることになりそうです。前回選挙のやり直しが決定したときにもトルコリラは下げているだけにこの結果次第ではさらに下値を模索する動きがでても決しておかしくはない状況です。
G20 大阪でのトランプ・エルドアン会談は失敗か
月末のG20 大阪サミットもかなり近づくことになりましたが、その前後に開催が予定されているトランプ大統領とエルドアン大統領の会談も大きな進展がみられる可能性がかなり低くなりはじめています。一部の報道によればすでにトルコはロシアからS-400ミサイル購入を決定済みで、ミサイル自体は7月にもトルコ国内に到着予定ということですから、まずこれが撤回されない限りトランプとの話し合いが前に進むとは到底思えない状況です。
そもそもNATOというロシアを仮想敵にしたレーダー網でロシア製のミサイルをトルコが飛ばすこと自体通常考えてもあり得ないことでトランプでなくても懸念を表明するのは当たり前の状況といえます。会談が物別れになった場合トルコリラはさらに売り込まれるリスクが高まり、これらの状況がすべて悪い方向に動いた場合には再度2018年8月に付けた最安値を下抜けるリスクが高まりそうです。
スワップ狙いでロングをしている場合ではない
国内ではほとんど金利でインカムゲインを確保できることがなくなっているだけに24%などという高い政策金利のトルコリラに注目が集まるのはわからない話ではありませんが、その裏側のトルコの政治的、経済的な現状を考えますととてつもなりリスクを背負いこむことになるという点を本邦の個人投資家は再度熟考すべき時間帯に来ているようです。自国民が必死にドルやユーロに資金を逃避させようとしているときに表面利率だけに気をとられてトルコリラを購入するという取引姿勢は決してプラスにはならないことを改めて考える必要がありそうです。
特にまさかのデフォルトという事態に陥った場合にはトルコリラは激しい下落に見舞われますので、流動性が枯渇し対円などではほとんど売るに売れない状態が示現する危険性を考える必要がありそうです。
当然トルコリラ円はドルトルコリラを買ってドル円を売る形で作り出される架空のクロス円で、しかも実需は全くといっていいほど存在しませんから価格が下落すれば投げ売りが続き、しかも国内の個人投資家の強制ロスカットがかさんだ場合想像以上に相場が下落してしまうことも覚悟しておかなくてはなりません。
時すでに遅しの感はありますが、一旦トルコリラのロングは損切するなりして相場から退場して様子をみるべき時間帯にさしかかっているのではないでしょうか。ここからは値ごろ感でナンピンするのも危険ですし、ポジションをとにかくきれいにすることを決断すべき状況です。