Photo Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-31/PVIQGW6JIJUP01

8月1日午前3時に発表となったFOMCの結果は市場の大方の予測通り0.25%の利下げと資産縮小の2か月早めの終了ということになりました。
しかしその後の会見に臨んだ議長の余分な発言から米株市場を中心として落胆の下落が始まっており、市場の催促相場のボタンをパウエル自ら押してしまった感があり、ここからの相場の下落には相当注意が必要になってきています。
パウエル議長は利下げは景気の下方リスクへの保険的対応にすぎず今回の利下げが緩和サイクルのスタートではないと言い切ってしまい、その後慌てて一回の利下げと言ったつもりもないと言い直すなど利下げ回数と緩和の始まりという言質をとられないように必死に振舞う様子が明確に顕在化し、これが市場の嫌気をかなり買う形となってしまいました。
結果株式相場は当然材料出尽くしと失望売りがまじりあって大きく売られることとなりましたが、翌日1日のNY市場は一時的に300ドル近い買戻しとなり売りも一時的かと思われた矢先の日本時間2日の午前二時過ぎにトランプツイートで中国への9月10日での関税実施がつぶやかれたことから株も為替も大きく売られ、米10年債金利は再び2%を割り込む事態となっています。

米中関係はまったく改善していない

今週ライトハイザーが再度中国に出向いて貿易交渉を再開したことから多少は進展を市場も期待したわけですが、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆円)相当に9月1日から10%の制裁関税を課すというトランプのツイートで、まったく米中関係が改善していないことが改めて確認された次第で、ここからの為替相場ではドル円は相当上値を抑制されそうな状況になってきています。一旦実施が見送りになった関税の発動が実際に行われた場合米中両国ともにそれなりのネガティブインパクトを受けることになり、今年後半からの景気の悪化をさらに加速させる可能性も出てくるだけに予断を許さない状況が続きそうです。

香港の状況も非常に危惧されるところに

Photo Reuters https://www.sankei.com/world/news/190730/wor1907300034-n1.html

また一旦は収束するかに見えた香港情勢が一段と悪化しているようで、この夏が終わらないうちに香港に人民解放軍が介入してしまいそうなまずい勢いが見え始めています。傘を差した市民がデモを繰り広げて一旦香港政府を押し返した辺りまでは市民パワーの勝利といった雰囲気を醸成してきましたが、足元の警察と市民のデモ隊との衝突は本格的な暴動の域に達する様になっておりいよいよ習近平が動きだすのではないかといった憶測が高まりつつあります。
既に香港経済は旅行客などの減少から悪化が始まっていますが、人民解放軍が投入されて武力制圧が現実のものになった場合には香港の金融市場から相当な資金が逃げていくことになるためアジア圏全般に影響が出る可能性は高く、米中関係の悪化が進めば香港の事態もまったく止められない最悪の状況に進むリスクが高まることになります。もともと8月は米株も決して強く推移しない時期ですし、ドル円もアノマリー的には円高になりやすい時期に差し掛かりますが、それにもまして政治的な状況が相場を下押しする危険性がありそうで、日ごろ以上の注意が必要になりそうです。

FOMCを通過して一旦材料出尽くしかと思われた市場はきわめて政治的な材料が揃い始めており、流動性の薄い時期だけに思わぬ展開になる危険性を十分に意識して売買していくことが肝要な時間帯にさしかかってきています。