今年もカンザスシティー連銀が主催するワイオミング州ジャクソンホールでの年次シンポジウムの開催が近づきました。例年各国中央銀行要人の講演における発言が注目を浴びるわけですが、今年はFRBのパウエル議長が9月のFOMCを前にどのような内容を口にするのかに非常に注目が集まりつつあります。もともとこのジャクソンホールでの年次総会は主要国の中銀のリゾート地における避暑の会合といった趣が強く、自然に恵まれたワイオミング州のジャクソンホールが会場として選択されていますが、バーナンキFRB議長が就任時にこの会合での講演でQEに関する重要な発言を行ったことから市場では非常に注目されるイベントとなっているのです。
今年に関してはすでに退任が決まっているドラギECB総裁は出席しませんのでますますFRBパウエル議長の発言に注目が集まることとなりそうです。
ただ自由度は限られるパウエル発言
CMEが発表していますFedWatchによりますと9月FOMCで0.25%以上の利下げを市場はすでに100%織り込んでおり、しかも12月のFOMCでは54%以上がさらに0.5%の利下げを織り込みはじめており、市場はあきらかにFRBが考えている以上に利下げを織り込んでしまっている状況であることがわかります。これはある意味での催促相場的な意味合いの強いものになっているとも言えるわけで、市場からはFRBが完全に株価の動向を睨みながら政策を決定していることがばれてしまっている点がある意味で大きな問題であり、市場との対話を難しくしているともいえるのです。
前回、米国での議会証言の席上でもパウエル議長の発言がタカ派的に聞こえるものとなった途端に株価は下がりだすという事態に追い込まれていますから、再び利下げは景気動向を見極めてといったような玉虫色の発言をした途端に株価下落の洗礼を浴びせられる危険性がかなり高まることになるだけに慎重かつ言質をとられない発言に終始せざるを得ないのではないかと思われ、市場が期待するほど決定的な発言は飛び出さないのではないかと推測されます。
過去のFRBの利下げ段階では平均的に5.5%程度の金利の調整幅を持っていたのがわけですが、FRBはすでに残り2%強しかその幅を持っていないかなり厳しい状況にあり、イエレン前議長が様々な言い訳をしては利上げを怠ってきたツケをパウエル議長が一身に背負わされている状況である点も政策の難しさを高めているといえます。
トランプ大統領の反応の方が市場に大きな影響を与える可能性も
トランプ大統領はジャクソンホールを意識しているのか、ここへきてしきりとFRBは1%以上の利下げをすべきであることをツイートで頻発するようになっており、かなり早期の大幅な利下げを強要する発言を強めています。したがってパウエル講演を受けたトランプ発言も非常に重要なものになりそうで、むしろトランプ発言のほうに市場が大幅に反応してしまうリスクも考えておく必要がありそうです。
いずれにしてもパウエル講演でなんらかの利下げ継続が示唆された場合には株価は一旦値上がりすることが期待できますし、米債金利のほうはさらに下落することが予想されることからドル円はドル安気味に展開することが容易に予想されるところです。逆に先行きに対する利下げに様々な理由をつけて明確に示さない状況になった場合には株式相場が嫌気して大きく売られることも予想されるだけに注意が必要です。足元の状況は完全に市場からFRBがプレッシャーをかけられているわけですから、パウエル議長も相当慎重な発言に終始するもののと思われますが、その中でも細かいニュアンスが非常に重要になってきそうです。
パウエル議長の講演は23日に予定されていますので日本時間では24日にかかるものと思われます。