8月相場もそろそろ終わりが見え始めてきていますが、まだまだ安心することはできず市場には驚くほど相場を押し下げるネガティブな材料が揃い始めています。果たしてどれが相場の下落にヒットすることになるのかはわかりませんが、この時点で一覧にして概観してみることにします。

ドイツ銀行株が理由もなく売られる状況

本邦勢がお盆休みでお休みだった先週、ドイツ銀行株が本国ドイツ、米国株式市場ともに大きく売られる局面がありました。調べてみても特段同行に絡んで悪い情報やニュースが登場した形跡はないのですが、取引量を伴って大きく売られる形となっており、大株主が売却したのではといった憶測も飛び交っていますが事実関係はなんら明らかになっていません。

Data Tradingview

ここのところ比較的話題にならなくなったドイツ銀行ですが、水面下では何かが動いている可能性は十分に考えられるだけにここからのこの相場にはかなり注意が必要になってきています。市場関係者の間ではファンドを中心にして何か動きがあるのではないかとかなり気にする向きも増えているようですので我々も厳重な注意が必要です。

GEの不正決算問題

Data Tradingview

GEの不正会計問題は、既にこのコラムでもご紹介していますが今のところさらなる動きは出ていないものの前々から問題が指摘されてきた企業だけにこれに火がつくことになるとほかの上場企業で同種の不正を働いてきたところが芋づる式に問題になるリスクがかなり高そうで、社債市場に火がつくリスクも出始めてきています。

不正報道直後一旦大きく売られた同社の株価は一旦買い戻しされましたが、またしても下方向に動いており市場もこの問題はまったく収まりを見せていないと認識していることが窺われます。

GEの不正規模は4兆円にのぼるといわれますし、同種の金融工学的な手法による決算会計を行っている企業も相当数あるのではないかと市場では噂されはじめているだけにここからのこの問題の動きからは目が離せない状況です。

一旦社債市場に火がつくと急激な信用収縮が起きることになりますから当然ジャンク債市場全体に波及するだけに実はこのネタは相当クリティカルなものといえます。

中国人民元安のさらなる進行

中国人民元も対ドルで一旦7元を超えてからは急激元安に走る動きにはなっていませんが米系の民間の金融機関の調査部門の分析によればここまでの米国の対中関税攻撃はかなりのダメージを中国経済に与えており、さらに9月1日から追加関税が適用された場合中国人民銀行が積極的に買い支えないと人民元は簡単に対ドルで7.3を超えるレベルまで元安に走る危険性が出てきているとの指摘がではじめています。市場ではアジア諸国の経済のファンダメンタルズがかなりしっかりしているとはいえ人民元が対ドルで7.3を超え始めると一部の国では1997年の再来を思わせるような金融危機が起きるリスクが高まるとされており、こちらも非常に気になるところです。毎日トランプ大統領のツイート砲で交渉がうまくいっているとかいないとか非常に現象的な発言にアルゴリズムが飛びついて相場は上がったり下がったりしていますが、本質的な危機がここにも隠れていることを見逃してはならない状況です。

No Deal BREXITはこの秋最大のリスクに

Photo BBC https://www.bbc.com/japanese/49403369

英国議会は夏休み中のようですがボリスジョンソン英国首相は8月積極的に動いておりEUとの交渉も進め始めていますが、市場の大方の予想としてはもはやバックストップについての新たな案を考えるにしてももはや時間切れの様相が強く、恐らくかなりの確率でNo Deal BRXITに突っ込むのではないかという見方が非常に強まりつつあります。結果は10月31日になってみればわかる話ですが、為替は噂で動く相場ですから秋口にかなり強烈な形でポンド安が示現する危険性がかなり高まりそうな状況です。その場合ドル円などはどうなるかが気になりますが、2016年6月のBREXIT投票後の暴落の動きを思い返してみればドル円は円高方向に動く可能性が極めて高く、これを材料にしただけでも簡単に100円を突破して円高方向に動きそうな気配になってきています。多くファンド勢が金ともに円買いをリスク回避の重要な手法としているのは間違いありませんから内容次第では驚くほど円高が進むことも頭に入れておく必要がありそうです。

ポンド円月足推移

今のところ8月米株相場は98年とそっくりに動いている

今年のNYダウの相場は1998年のそれとそっくりな動きをしているという話もこのコラムでは既にご紹介していますが、足元の状況はさらに酷似しており、もしここから先も同じように動くとすればそれなり下押しが待ち構えていることになるため、こちらも注意が必要です。もちろん98年とは相場を構成するリスク要因も異なりますから全く同じように動くとは簡単には思えませんが、月末に向けて下落があってもおかしくはなく、こちらも相当な注意が必要です。

このように足元のリスク要因は驚くほど増加しており、どれが相場を動かすことになるのかは全くわかりませんが、9月に入ってすんなり上昇相場とはいかずにもう一旦下値を模索する危険性があることはかな意識しておく必要がありそうです。

怖がってばかりいては取引はできませんが、しっかりストップロスを入れるなどの防衛策をとりながら相場に向き合うことが肝要な8月末の相場です。