英国のEU離脱交渉期限はあと四週間を切るほど切迫してきており、事実上17日、18日のEU理事会までである程度形がつかない限りはまたしても延期、またボリスジョンソン首相も辞任に追い込まれる最悪の事態が近づいています。新たにボリスジョンソンが持ち出してきている改定案というのも現状ではEUに受け入れられる可能性は極めて低く、ポンドの取引というFXの視点を度外視してこの状況を見ていても本当にどうなるのか全く分からないという絶望的な気分になるものですが、実はボリスジョンソンにはさらにもう一つのプランBが存在しているという噂が市場に駆け巡り始めています。それが辞任したメイ首相がEUと昨年まとめた暫定的な合意案を蒸し返してそれに手を入れて合意に持ち込もうとすることがにわかに持ち上がってきているのです。
いまさらメイ首相の案を持ち出して突破できるのか?
すでに万事休すに見えるボリスジョンソンですが、実はなんとメイ首相とEU首脳との間ですでに一度まとめられていたバックストップ案に多少のモディファイを加えていまさら乗ることで英国内もEUも納得させることになるのではないかという猛烈な案が観測されはじめているというのです。しかしそれではメイ首相はなぜ辞めることになったのかの説明が全く使かないことになるきわめて理不尽な解決法ですし、そもそも英国民はそんなことで納得がいくのか?という大きな疑問が浮かびますが、
これなれならば10月31日の離脱延期もしなくて済みますし、英国は曲がりなりにも通称政策における自由度を確保することができることになり結果として議会を丸め込める可能性が一番高い、EUとの合意をとりつけた離脱の実施となるわけです。
そんなバカげた話がまかり通るのかとは思いますが、今やなんでもありの混沌とした状態ですからメイ首相では説得ができなかったものでもボリスジョンソンの手によりあっさり一点突破することは全くないとは言えなくなってきていることも事実です。
10月末に向けてまさかのポンド大幅買い戻しか?
為替のレベルに話を戻しますと、10月31日にEUとの合意の形でのBREXITが実現した場合、ポンドが大きく買い上げられるというまさかの事態になることも想定しておいたほうがよさそうなところに差し掛かってきているようです。トランプが大統領選に当選したら株も為替も驚天動地の下落相場になるという事前予測がありながら結果は相場爆上げという事態になった2016年11月は記憶に新しいところですが、もしかしますとポンドも同様の全く想定外の動きになることもありえるという点だけはしっかり認識しておきたいところです。実際こうした動きが出るかどうかは18日までのEU理事会の動向である程度見えてくることになりますので、月末よりもこの時間帯に注目することが重要になりそうです。
ただ、依然としてEU離脱延期ならばポンド買戻し、無理やり合意なき離脱ならポンドの激売り、さらにボリスジョンソン辞任でもポンド売り加速というシナリオだけは残っていることを忘れてはなりません。
こうした政治的状況で大きく上下にぶれるポンドはこの時期できるだけ触りたくはない感じですが、残念ながらドルにもユーロにも日本円にも影響がでることは必至ですからとにかく状況をつぶさに見守ることが重要になってきているようです。それにしても3年4か月前にBREXITで英国にこんな混沌とした状況が訪れるとはだれも思っていなかったわけで、政治の世界は実に不透明であることを改めて感じさせられる次第です。