米国内では、メディアが11月からかなりの時間を使ってトランプ大統領の弾劾について報道しており、この報道だけ見ていますと、もはや有罪が確定してしまうのではないかとさえ思う勢いです。
しかし実際には、下院の委員会が調査と公聴会を行っているだけで、弾劾条項の起草はこの年末にいよいよ行われるのではいかという段階です。
ここからはかなり長丁場のプロセス
AFPBBがかなりわかりやすいチャートを開示していますので、それを利用させていただきますと、2番のステージが足もとの状況でここから弾劾条項の起草が行われるか、弾劾調査が終了になるのかが年末の段階となっています。
このフローだけ見ていますと、弾劾が決まればどんどん話が進むように見えますが、実は時間軸としては相当長いものになることが予想され、トランプ政権にとって弾劾裁判になった場合には、それなりのダメージが与えられることは事実でしょう。
しかし民主党にとっては、逆に大統領選挙どころではないぐらい時間がとられることになり、結果的に選挙運動にプラスに働くのかどうかわからないというなかなか微妙な状況が待ち構えていることになります。
年末に米国の下院議会から弾劾条項の起草が行われ、これが可決されれば来年からいよいよ弾劾裁判スタートとなるわけですが、民主党が過半数をもつ下院で可決して上院に持ち込まれるためには、来年の前半戦の時間をほとんどこれにとられることになります。
現状で上院では、共和党が多数を占めていますから、すんなりと可決になってトランプがステップダウンになることは考えにくく、果たして大統領選挙に影響を与えることができるのかどうかが大きな問題になります。
またウクライナゲートに関しては、バイデン元副大統領とその息子の問題もかなり大きくクローズアップされており、逆にかなりのダメージを受けているという見方もありますので、本当に民主党にプラスに働くかどうかはまだ判らない状況です。
弾劾開始ならドル売りは必至だが長く続くかどうかは別問題
クリスマス前に下院の委員会が弾劾に向けて動き弾劾裁判が決定した場合には、ドル円はそれなりの下押しを余儀なくされそうではありますが、それが大きな動きになるかどうかはわからず、株価にもさほど大きな影響を与えない可能性がでてきています。
米国のメディアが騒ぐほど大きな問題にはならない可能性もあり、相場にどれだけ影響が及ぶかはむしろ、弾劾裁判が始まる来年以降という見方も強いのが現状です。
この手の話は国内の政治問題だけに、海外勢の認識がどこまでそれとシンクロしてくるのかが大きなポイントになりそうで、特に為替の領域ではこれが大きな材料になるのかどうかは不明です。
むしろ15日に実施が予定されている対中関税がそのまますんなり履行されたほうが、市場へのネガティブインパクトはかなり大きなものになりそうで、今週はとくにそちらのほうにフォーカスすべきタイミングになりそうです。
政治主導の相場は動きがいまひとつよくわからない
今年の相場はファンダメンタルズというよりは、ほとんど政治的な要因が相場を動かすようになってしまっており、ほとんど政治相場であったと言っても過言ではありません。
特に選挙が絡むと米国でも本邦でも、無理やり相場を下げさせないような緩和措置がでることから、すっかり上げたり下げたりする循環というものが失われてしまっており、悪い材料にあまり市場が反応しなくなっているのも特徴的な年となりました。
これまでの相場であれば、明らかに悪材料と思われるものでも非常に反応が薄くなっているため、どれだけのインパクトがあるのかは本当に起こってみないとよくわからないというのが正直なところです。
また、報道のヘッドラインで敏感に動くアルゴリズムの取引も、結果的に儲かったファンドがほとんどないという状況で、この年末までにこの手のファンドはかなり市場から姿を消すと言われています。
こうなると、2020年からの相場の動きにも変化が現れそうで、注意が必要になりそうです。