1月第一週は心配されたフラッシュクラッシュもなく、比較的静かな相場のスタートとなりました。
ドル円は年末のポジション調整などもあって、108円台中盤に下落して1年の取引を終えましたが、年明け2日はロンドンタイムに108.865円まで上昇したものの、堅調な株価とは対照的に米債市場の金利が下落したことから、108円台前半まで下落することとなり、3日のアジア時間には一定の回復を見せました。
米国がイラン革命防衛隊の司令官をイラク国内で殺害からリスクオフに
イラン革命防衛隊・コッズ部隊のガセム・ソレイマニ司令官をトランプ大統領の命令により、殺害したという発表があったことから緊張感が高まり、戦争が勃発するのではないかとの憶測もあってリスクオフの相場展開となりました。
米株が大きく下落したうえに、ドル買い円買いが進んだことから、ドル円は昨年11月以来の107円台まで下落しましたが、年始休みで相当量のリーブオーダーを置いた本邦の実需筋の買いから意外に下値は底堅く、大きく走ることがないまま週の短い取引を終えています。
年末の30日にイラクの米国大使館が襲撃されたことから、きな臭い雰囲気は漂っていたものの、軍産複合体と一線を隔し、戦争嫌いを自称していたトランプ大統領がイランの司令官を殺害することに同意したのはかなり意外な展開であり、ここからイランと米国の本格的な戦争状態に突入するリスクは極めて高くなっている状況にあります。
クリントン政権の時には、弾劾裁判を遅らせるためにやはり中東を攻撃したことがあり、今回のトランプの判断はこれを真似たものではないかといった見方が広がっています。
一方で、戦争となると国民が一致団結してナショナリズムを展開する地合いを大統領選挙選にうまく取り込むためにあえて、イランと事を構える決断をしたのではないかといった憶測もあり、理由は定かではありません。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は既に激しい報復を宣言しており、サイバーテロやリアルなテロが行われた場合、その都度相場はリスクオフに動く可能性が出てきている点が危惧されます。
週明けドル円は中東報道次第の展開が継続の見込み
週明けの相場は、イランの出方次第でさらにリスクオフが続く可能性が極めて高く、うかつにドル円もロングを持てない状況になってきています。
既にイラン司令官殺害に続き、ほかのターゲットにも攻撃が加えられているという報道がでてきていますので、1月第二週の相場も中東情勢次第で相場が動きそうです。
イランに対しては、イスラエルもかなりの敵対心をもっているようで、米国の特定ターゲット攻撃だけではなく、本格的な戦争に発展する危険性もあるところです。
そもそもドル円は1月に関しては、シーズナルサイクルから下落しやすいのが特徴で、1月23日前後までは何もなくても弱含みの展開になりやすい点はあらかじめ理解しておきたいところです。
過去20年間の相場のシーズナルサイクルを見ますと、円は1月円高に向かいやすく2月から円安へと転換することが多くなりますので、中東情勢も含めてこうした動きがどのように表れてくるのかを粒さに観察しながら取引していくことが重要になりそうです。
1月第二週は金曜日に米国の雇用統計の発表がありますが、ここのところこの結果はほとんど相場に影響を与えなくなっており、やはり中東情勢と米株の動きが大きなポイントになってきそうです。
ユーロドルも有事のドル高に
一方、ユーロドルの方はやはり中東情勢の深刻化を受けて有事のドル買いが進んでおり、ここからさらにドルが買われる可能性にも注意していきたいところです。
例年1月は相場のセンチメントががらりと変わる傾向が強くなりますが、今年の場合には地政学リスクが非常に大きな材料になりつつあり、想定外の事態に発展した場合にはよりリスクオフの傾向が強まることが考えられますので慎重な取引が必要になりそうです。