中国における新型肺炎の拡大はまったくとどまる気配がなく進んでおり、感染者も死者も連日増加中の状況です。
3日の始まった上海市場は中国政府の手段を選ばない暴落阻止策が一定の効果をもたらし春節の休み前の7.7%の下落でなんとか下押しを止める形となっています。
それでも下落幅は相当はもので中国政府がここまでして相場の暴落を阻止しようとしている背景にはこの新型肺炎による損失と経済停滞が我々の想定をはるかに超えている可能性があることを表しているという見方も強まってきています。
市場の関心は肺炎発症患者の拡大の問題とともに中国経済がこの問題に起因して大きく停滞してしまい、それが世界各国に大きな影響を及ぼすことになるのではないかという点も心配しはじめています。
問題は中国のGDPをどの位押し下げることになるか
今回の新型肺炎に関しては過去の事例として参考になるのが2003年にやはり中国で大流行したSARSだけになることから経済への影響を予測することが非常に難しくなりつつあります。
2002年11月に発症がはじまったSARSの場合ですと翌年2003年の4~6月期中国のGDPは年率で2%の下落を記録しています。
当時はGDPが11.1%というかなりの高成長の期間だったわけですが、それでも一時的に9.1%にまで落ち込む状況となっています。
直近の中国の成長率は年間で5.9%程度と見られていますが、今回も同様に2%ほどの下落になるとした場合にはかなり大きなダメージを受けることが予想されます。
ちなみに中国GDPは2019年の日本円にして1600兆円で2003年当時に比べて7.4倍を記録してますから当時と同じ2%の縮減が起きたとしてもその金額ベースでは比較にならないほど大きなものとなっています。
日本経済への影響もかなり多大なものになる可能性
気になるのはこの新型肺炎による日本経済へのネガティブな影響ということになります。
本邦の証券会社とその関連のシンクタンクは現状ではこの新型肺炎によるGDPの押し下げをもっぱらインバウンド消費だけに絞って算定しています。
それによると野村総研の想定で国内GDPを0.14%から0.45%の押し下げ、三菱モルガンスタンレーは0.2%の押し下げと見積もっているようですが、終息時期の遅れがでることになればさらに下押しするリスクは当然高まることになります。
ただ、今回の新型肺炎によるネガティブインパクトの最大の部分はインバウンドではなく中国経済、景気の大幅減退による本邦の外需の著しい落ち込みになるものと思われます。
そうでなくても消費増税ですでに昨年10月から12月の四半期の実質GDPはマイナスとされていますから、中国経済の減退が国内景気に及ぼす影響は絶大で、2019年から2020年にかけては本邦のGDPが完全いマイナス成長に転落しても全くおかしくありません。
SARS騒動から17年後の直近の中国はさらに世界的に影響を及ぼす存在になっていますから、高額品の購入を含めて自国の国内消費のボリュームはかなり大きく、これが縮減するのに加え、製造関連でもその再開が大きく遅れることになれば世界的な景気の下押しとなることが心配されるところです。
新型肺炎のウイルスは冬がすぎて気温が高くなれば自然に消滅するのではないかと見られていますが、4月ないし5月にピークをつけたとしてもここからまだ3か月、4か月という期間、今までのような騒ぎが継続する可能性は高く、終息が長引くことになれば東京オリンピックの開催すら危ぶまれるタイミングだけに非常に心配される問題となってきています。
米国株は大統領選挙を控えて下げさせないようにトランプ政権もFRBもかなり手を尽くして相場の維持に務めることが予想されますが、国内の日経平均に関してはそもそも景気が悪化しているだけにここから上昇に転じることは相当難しそうで、ドル円もその動きとの相関性が強まれば下押しするリスクはかなり高まりそうです。
市場の予測では日経平均2万2000円の攻防が指摘されはじめていますが、果たしてその程度の下落で済むのかどうかはまだ全くわからない状況です。
したがってドル円も107円方向に押し戻される危険性は相当高くなりそうですが、そこからさらに下落するかどうかは株価次第ということになりそうで、今後の日米の株価動向からも目が離せない状況になってきています。
1月突然降って沸いたように登場した新型肺炎騒動ですが、深刻な時間帯に差し掛かってしまっています。