米国トランプ大統領は日本時間の15日の早朝6時過ぎに記者会見を行い、議会で訪韓が可決していた香港自治法にも署名したことを明らかにしました。
また、同時に香港に対するこれまでの優遇措置を廃止する大統領令にもサインしたことから6月末に中国が成立、即日施行した国家安全自治法の施行に明確に対抗する姿勢を鮮明にすることとなりました。
今回成立した香港自治法は、ここから90日以内に国務省が香港の自由や自治を侵害した個人や団体を特定し、ドル資産の凍結などの制裁の可否を検討することになり、二段階目としては特定された個人や団体と取引がある金融機関も制裁の対象とすることで、米銀による融資の禁止、外貨取引の禁止、貿易決済の禁止、米国内の資産凍結、米国からの投融資の制限、米国からの物品輸出の制限など総計8項目にわたり制裁発動までに1年間の猶予を与えることになるかなり厳しい内容となります。
中国側の反発も予想されるだけに、ここからの米中の非難合戦がどこまでエスカレートすることになるのかが非常に注目されます。
米国は香港ドルのペッグ制を廃止する旨も打ち出していますので、為替の領域にも影響がでることは必至の状況ですが、米ドルと香港ドルのペッグ制を外した場合基軸通貨としてのドル円の地位が保持できるのかという逆の問題も発生する可能性があるだけに、中国がどのように対抗してくるかが注目されます。
南シナ海の中国利権主張についてもトランプは明確に否定
これに先立つ14日にはトランプが南シナ海における中国の権利主張を公式的に非難しはじめています。
これまでこの海域の領有権問題には関与しないとしてきた米国でしたがトランプ発言はこれを大きく踏み込むものとなっており、こちらについても中国の反発がどこまでエスカレートするかが注目されるところです。
ポンペオ国務長官も13日には南シナ海のほとんどの資源に対し中国政府が主張する権利は完全に不法なものであり、その掌握を目的とした嫌がらせの活動も同じく完全に不法との声明を発表し、台湾もこの考え方に同調する動きを見せ始めています。
この南シナ海は天然資源の宝庫とされていることから、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張してきていますが、中国はさらに一歩進めて独自の「9段線」を根拠にほぼ全域での管轄権を主張しており、香港の一国二制度廃止とともにこの領域で実質的な支配を強引に進める可能性が指摘されてきました。
しかし、中国が武力的にこの領域を支配するようなことになった場合、米国と武力衝突があるのかどうかは非常に大きな問題となるのは言うまでもありません。
とりわけ台湾に対しても中国はちょっかいを出そうとしていますから、その延長線上で南シナ海の支配問題が顕在化した場合にどのような衝突が起きるのかが非常に気になるところです。
こうした地政学リスクではドル円はドル高なのか円高なのかも問題
今年の3月の新型コロナウイルス起因の暴落以降リスクオフとなるととかくドルキャッシュを買う需要が増えており、最近の株式市場でもリスクオフが進むとドル円もドル買いになることが多くなっています。
中国との小競り合いになった場合には豪ドル円だけは間違いなく円高になりそうですが、ドル円がどういう動きになるのかは実際に起きてみないともう一つ良く判らない部分がありそうです。
従来からの地政学リスクによるドル円の動きならば即座に円高になる場面がみられましたが、米中の武力的なにらみ合いが現実の者になった場合果たしてドル高になるのか円高になるのかはかなり注目される状況になりそうです。
トランプ政権は中国企業の米国株式市場上場も段階的に排除する意向
トランプ政権は米株市場に上場している中国企業を本格的に排除することも検討に入っているようで、実際にどの企業を排除するかは短期間に明確になりそうであるといった報道も飛び出しはじめています。
オバマ政権時代にとにかく中国と接近してあらゆることを許してきたことが大きな原因であるだけに、このタイミングからの中国叩きはとりもなおさず民主党バイン候補への攻撃の重要な武器になるのは間違いなさそうで、間違いなく大統領選をにらんだ形で中国叩きが進行することが予想されます。
株式市場ではこうしたトランプ政権の具体的な動きで株価が下落するという状況は示現していませんが、この先中国の反応を含めて影響が出るのは必至で、11月の選挙に向けて為替の取引についても十分に注意が必要になってきているようです。