パンデミックによる金融市場への影響と先行きというのは、資本主義が高度化した戦後の経済の中では事実上だれも経験したことのない事態で、ありなかなか予想しづらいものがあります。
FRBもECBも日銀も株式市場が下落することをまったく良しとせず、延々と価格を支え続けるよう政策を連発していることから、株式市場の動きは実に不可解なものとなっており、為替市場もそれとは別に動意の少ない万年日柄調整のような相場状況が示現しはじめています。
本来相場は上昇しすぎれば自律的に下落し、値幅で調整することからそれがばねになって次の高値を狙って動き出すというダイナミズムを持っているはずですが、とにかくFRBをはじめとする中央銀行が無理やり人工的に相場を下げさせない動きに出ることからきわめて自由度を欠いたものとなってしまい、それがまた延々と続く不可解な状況を示現させる原動力となってしまっています。
とくに米株、NASDAQ市場は新型コロナ禍を全く意識することなくどんどん上昇する始末でIT株を中心に史上最高値を更新する一部の限られた銘柄が株式指数を押し上げる形になっており、従来からの相場を知る者にとってはきわめて理解しがたい動きが続いているのが現状です。
多くの学者や著名投資家からも懐疑的な見方が強まる
全く自由度を欠いた相場状況には多くの学者や市場で長くビジネスをしてきた著名投資家が相次いで懐疑的な見方を示しています。
ニューヨーク大学大学院教授で終末博士の異名をもつルービニ教授は、FRBの現状のやりかたが負の供給ショックを引き起こしかねないと指摘しており、これまでインフレを抑止してきた要因が保護主義・デカップリングで逆回転を起こすとかなり手厳しい未来予想をしています。
赤字国債による財政赤字穴埋めは1973年、1979年の両年にスタグフレーションとなって表れていますが、ルービニ教授は同様なリスクに直面していると指摘しています。
MMT理論では全くインフレが起こらないとされてきていますが、実は今のFRBのやり方は不意に経済停滞とインフレが同時発生になるスタグフレーションを起こすリスクが高いことを強く指摘して切る状況です。
実際ここからインフレが発生することになれば米国経済は大変なダメージを受けることになり非常に心配されるところです。
また、世界最大のヘッジファンドのCEOであるブリッジウォーターアソシエイツのレイダリオも異なる視点で極めて似たような指摘をしています。
レイダリオは、今の経済や市場は中央銀行や中央政府との協調対応によって動かされていると述べ、その結果資本市場は従来のやり方でリソースを配分する自由な市場ではなくなったと現況を非常に厳しく指摘していて、同氏は従来の資本主義のメカニズムが明らかの壊れていることを指摘しているわけです。
このまま中央銀行が下げさせない相場を続けていくことになれば、健全な資本主義の市場は破壊され計画経済的、統制経済的社会が実現してしまうのではないかという危惧の念が高まりを見せているのです。
特にFRBパウエル議長が3月暴落直後から実施しはじめた無制限QEの実施はその最たるものであり、本来なら明らかに法律違反であるモラルハザードな政策を打ちぬいている状況は本当にこれでいいのか、かなりクビをかしげたくなる状況です。
FRBがあらゆる金融商品を買い支えることになれば確かに相場は下落しなくなりそうですが、本来資本主義市場がもつ相場の循環性、とくに価格の値幅で調整するような自律的機能は完全に消失していまうことになり、QEもとにかくエンドレスで行うことを余儀なくされるのはもはや間違いない状況です。
相場が自らこの妙な均衡を突き崩すば面が到来するのか
とにかく相場が下落してもFRBが何とかしてくれると市場参加者が多く依存し、下落は押し目とばかり常に買い向かう相場というのはおかしなものであり、この相場が本当にFRBの緩和が続く限り延々と続くのかどうかは非常に疑わしくなってきています。
中国が資本主義化する一方で米国が著しく社会主義化する動きになっているところも非常に気になるところです。
人によっては現状の相場を高値モラトリアム状態と見る向きもあるようですが、いずれにしても資本主義市場本来の自律性を伴って相場が大幅に下落するタイミングがやってくるのかどうかに注目が集まりはじめています。
これまで長く金融市場に関わってきた投資家ほど今の相場に違和感を覚えているのが状況で、この夏本質的な動きがでるのQE相場がまだ続くのかは非常に大きなテーマになりつつあります。