すでにこのコラムでもご紹介しております通り、米国トランプ政権は大統領選挙での勝利を睨みながら中国への厳しい対応で支持率を高めようとしていることは間違いなさそうですが、今回トランプ政権ではポンペオ国務長官が中国征伐の指揮をとることが鮮明になってきており、すでに7月22日に米国ヒューストン中国総領事館の閉鎖を命じています。

ポンペオ国務長官は22日、中国がアメリカの知的財産を「盗んでいる」ことを受けて決定であるとしていますが、さらに24日にはサンフランシスコ駐在の中国領事館に身を隠していた軍事研究員の唐娟容疑者が米当局により逮捕されています。

カリフォルニア大学デービス校で研究員として働いている唐容疑者は米国ビザを申請し、自身の中国人民解放軍服務の経歴と中国共産党との関係事実を否認した容疑で起訴されており、どうやら米国は中国人スパイの米国内での活動を徹底的に潰してまわる意気込みを感じさせられます。

Photo State Department https://www.cnbc.com/2020/07/26/op-ed-the-us-china-clash-has-entered-perilous-new-territory.html

ポンペオ国務大臣はトランプ大統領とはまったく別個にワシントンで行われた演説の席上、私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変えると強い警戒感を示しており行動を改めさせるため、民主主義国家による新たな同盟を構築して対抗すべきだと熱弁を振るっています。

また、クリントン政権以来米国が安易に中国の米国内での動きや世界的な戦略実施を許してきた結果が、現状を招いていることを強く協調しており、すでに米国は過去20年間行わなかったやり方で中国共産党と侵略に対峙していると中国をけん制しはじめています。

一方、中国の反撃も想像以上に早く7月24日には中国政府が四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じたと発表と発表しています。

表向きは成都市の米領事館スタッフが中国の内政に干渉し、中国の安全と利益を危険にさらしたためとされていますが、間違いなくヒューストンの中国領事館閉鎖に対する報復措置であり、ここからさらにこうした応酬がエスカレートされることが危惧されはじめています。

当然株式市場はこのような米中の対立を強く嫌気しており、まず中国上海株が大きく値を下げるとともにNYタイムには米株3指数ともに下落となり、ここからさらに相場が下落することも想定せざるを得ない状況になりつつあります。

トランプ政権の中国叩きの先にあるのは支持率回復によるバイデンの追い落とし

Photo Getty Image https://www.cnn.co.jp/usa/35152272.html

中国攻めは完全にポンペオの指揮下で実行されることが見えてき始めていますが、その裏に隠れているのはやはり大統領選におけるバイデンの追い落としが大きなテーマですから、クリントン政権やオバマ政権がやたらと中国と近しい関係にあったことがこのような中国の横暴を許したのであるという責任論に帰結させていこうとするのはもはや間違いなさそうです。

今後、トランプとバイデンの間で繰り広げられるであろう大統領選をめぐるディベートでも、中国にどう対応するのかは大きなテーマになってきそうです。

そうでなくても弱腰でスリーピーバイデンなどというあだ名をつけられているバイデンが、どのようにトランプの攻撃を切り返すことができるのかはかなり大きな注目点になりそうです。

本来この時期中国との対立により株価が下落するのはトランプ陣営も決してよしとはしないことが予想されますが、NASDAQの上昇などは異常な爆謄状態であり、ここから大暴落にならない限りは多少の相場の下落の痛みを味わったとしてもトランプ政権の中国攻めはまだまだ続くことが予想されます。

中国が香港での動き、南シナ海の覇権争い、IT分野での特許侵害や情報の盗用などあらゆる面で問題を抱えた国で米国にとっては最大の脅威であるということが広く米国民に理解されれば、株式市場の値下がりを上回る国民の支持を得られる可能性があるだけに、トランプ政権としても必死の体制が続くものと思われます。

当然中国の出方次第では株が大きく下がる局面もありそうで、今回の米中の対立については株式市場も為替市場も甘く見ないで注意深くトレードしていく必要がでてきているようです。

8月は日米ともに株価が低迷しやすく、しかもドル円も円高に振れやすくなりますので市場参加者が減少する8月中場に向けて想定外の下落に見舞われても対応できるような損切設定などの準備が必要になりそうです。

新型コロナではほとんど下落はないと高をくくり始めた市場ですが、米中対立ではそうはいかない危険性がかなり高まりつつあります。