3月の新型コロナ暴落以降、FRBが過剰ともいえる緩和措置を実施し市場にありえないほどのドル資金を提供したことで、米株相場はコロナ禍であるにも関わらず大来な上昇を果たすようになりました。

さらに企業の自社株買いも下値を堅くする材料として機能してきたわけで、コロナの給付金を使って米国のミレニアル世代を中心とした、これまでほとんど株式投資などに興味を持たなかった層が、スマホの手数料無料アプリを駆使して大量に市場に参入したことから、米国株式市場は過去に例を見ないほどの殆どゲームのような博打市場へと変貌を遂げることになり、しかもこうした個人投資家の動向が大きく相場に影響を与えるようになってしまったことが明確になってきています。

そんな中でNASDAQは史上最高値を更新中で、もはやこれまでのバブル相場にはなかった異様な雰囲気さえ示現する様になってきています。

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上のチャートはNASDAQ市場が開設されてからの指数の推移を示したもので、今年3月以降の相場の上昇はかつて見たことのない驚異的な状況に陥ってきていることがはっきり認識できる状況です。

NASDAQは2000年のITバブルと完全に超越

2000年のITバブル末期は、かなり相場が上昇したといっても2000から5000までその指数が大幅に上昇し反転下落することになり、上昇はそれをはるかに超えるスピードと規模感で展開しており、今までのバブル相場の規模を完全に凌駕する状況になっているようです。

この動きはまさに恐れを知らない米国個人投資家の日々の猛烈な売買がそれを実現しているもので、春先はNASDAQ銘柄の投資先も分散していた印象がありました。

しかし、利益がでて投資資金が潤沢になった投資家が増えたせいか現状ではテスラ、アップル、アマゾン、マイクロソフト、ネットフリックスといった優良銘柄に資金が集中し始めており、9月に入ってからはすでに売買オーダーにアプリが追い付かないほどの状況になっていることがメディアでも報じられつつあります。

特に株式分割のテスラとアップルはパニック買いの状況

テスラに関しては株式分割の報道がでてから個人投資家の人気は激しさを増すばかりですが、9月1日に同社が自社株を売却して日本円で5300億円ほどの資金調達を行うと発表したことから一旦株価は下落に転じています。

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ただし、下げたところはまた果敢に買い向かう個人投資家が大量に発生してきており、さらに上値を狙いそうな状況です。

また、アップルのほうも爆発的人気でここから一体どこまで上昇するのか全く想定できないほどの買いを集めている現状です。

こうした買い向かいの個人投資家は企業決算そっちのけですし、経済指標やFRBの声明発表もお構いなしでとにかく買い向かい一辺倒であることが非常に危惧されるところとなってきています。

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相場の暴落を知らない米国個人投資家がもたらす異常な雰囲気

ここ数日の個人投資家のテスラとアップル株に対するいわゆるパニック買いの状況は明らかに異常で、とにかく今買わなければ相場に置いてけぼりにされるという危機感をひしひしと感じる次第です。

これは2017年末にビットコインの買いあがり相場暴騰の騒動が起きたときにもみかけた光景で、暴騰の挙句に完全に反転してもとのレベルに戻った暗い記憶がよみがえります。

ビットコイン2017年末の顛末推移 Data Tradingview

NASDAQがこのビットコインのような動きになるのか、さらに高値を維持して推移するのかどうかは全くよくわかりません。

とにかく理由もはっきりわからないままに1日に5%だ10%だと上昇し続ける相場は、どこかで一転して下落に転じるまでの時間も短いのが過去の特徴であり、米国株の中でもNASDAQが非常にリスキーなところに向かっていることを強く感じさせられます。

3月の暴落以降相場に参入うした個人投資家はとにかく相場の上昇しか経験していませんから、ひとたびこの相場が下落に転じることになれば一斉に売りの非常口に殺到することは間違いなさそうで、しかも特定の5銘柄にその投資先が集中するとなれば、どれだけ優良銘柄であっても一瞬のうちにパニック売りが示現して、想定以上に相場を下落させかねない危険性が高まります。

AIやアルゴリズムがそうした売りに拍車をかけることによって、さらに暴落を引き起こしやすくする傾向があるだけに、個別銘柄の実態状況とは関係なく市場参加者のセンチメントの変化だけで売りが加速するリスクが高まります。

上昇段階ではあまり明確な相関性をもたない為替の通貨ペアも株価の大幅な下落が示現すれば必ず巻き込まれることになるのが世の常で、とくにドル円は米株が再度暴落に転じた場合には相当な下押しをもって追随することになりそうで、日ましに危惧の念も高まる次第です。

相場の暴落はいつどのタイミングで示現するのかを正確に当てることなどできませんが、相場の様子がおかしいということだけは大地震に何等かの前触れが起きるのと同じように感じることができます。

どうもNASDAQ市場はそうした危険な雰囲気が高まりを見せています。

これが単なる取り越し苦労に過ぎないのであれば一安心ですが、現実に相場に異変が出た場合は相当大きなダメージとなるだけに、もちろんここからすぐに暴落が始まると決まったわけではありませんが、十分な注意が必要な時間帯になってきていることを意識する必要がありそうです。