このコラムでは既に米国の株式市場が猛烈な速さで完全にバブル相場に突入したことをお知らせしたばかりですが、その米株相場がNASDAQを中心にしてさしたる理由もないままに怒涛の下落をはじめており、果たしてこれが相場のさらなる大幅下落につながるのかどうか市場が大きな関心を寄せ始めています。
米株市場はほとんど手数料無料アプリ利用の個人投資家に占拠された状況
新型コロナウイルス感染が拡大して以来、米国では国と州からかなり手厚い給付金が支給されるようになり、人によっては感染拡大前に仕事をしていたときよりも可処分所得が多くなるという極めて特異な状況が示現するようになりました。
これを資金源として取引手数料無料アプリであるロビンフッドやEトレード、チャールズシュワブなどから積極的に株式投資を行う個人投資家が激増したことが米株市場を大きく上昇させてきたのが実情です。
こうした個人投資家は、ほとんどネットのゲームのように株式を乗りと勢いだけで売買することから買えば上昇し、上昇するからまた買いが集まると言った過去の株式相場では全く見られないような動きが多発するようになり、さらに8月以降は利益を上げて大きくなった資金を使ってアップルやテスラ、マイクロソフト、アマゾン、ネットフリックスといった特定株に集中投資が行われるようになったのが大きな特徴になっています。
実際8月31日のNY市場取引開始直後から、ロビンフッドとチャールズ・シュワブでのシステム不具合で多くの口座取得ユーザーが取引ができないというシステム不具合に見舞われることになりました。
これは明らかにアップルとテスラの株式分割をきっかけとした取引高の急増が引き起こしたもので、この日だけでアップルは一時5%、テスラは13%の上昇となり、その過熱感のもの凄さを見せつけることになっています。
機関投資家とファンド勢は様子見の状態で取引量はそれでも限られる
こうした相場状況ですから、さぞや取引量も増えていることかと思いきや実態は全く逆であり、機関投資家やファンド勢はこの狂乱的な相場での取引を差し控えていることから、どれだけ個人投資家が参入し市場を席捲しても取引量は非常に限定的で、昨年と比べた場合いわゆるリクイディティと呼ばれる市場流動性はきわめて低下傾向にあるのです。
そんな中でも相場は史上最高を更新していて、個人投資家が繰り出す取引だけで個別銘柄も株式指数も上昇更新という状況は、リスクの高い取引となっていることは間違いないようです。
そんな中で上昇の混乱に合わせて一儲けしようとする輩も登場しているようで、ソフトバンクグループはこの米国株上昇時にコールオプションを日本円で5兆3000億円分購入したことが大幅な上げにつながり、コール市場にくじらがいると噂されたのはこのことのようです。
3日からの株価の下落でどれだけソフトバンクGがオプション残高を抱えているかは不明ですが、すべて売り抜けていたのだとすれば相場の下落にも影響を与えている可能性が考えられます。
いずれにせよ個人投資家主体の相場ですから、ひとたび株価が下落しはじめると一斉に出口に向かって売りのパニックになるのがこうした相場の常で3日からNASDAQをはじめとする相場の大幅な下落は、こうした個人投資家心理が強く働いた結果もたらされた下落相場である可能性は非常に高まっています。
4日はNY市場からさらに3指数とも売られる展開になりましたが、一旦下値では買い向かう向きもでて下落に歯止めがかかったようにみえていますが終値では続落となり、ここから週明けどのような展開になるのかが非常に注目されるところです。
誰も言わなくなった新型コロナ二番底形成の起爆剤になる危険性も
今のところは相場がどこで下げ止まるのかは全くわからない状況で、個人投資家のセンチメントだけで動いていくだけに売りがかさめばまだまだ下落するリスクは高まりそうです。
もともとPBRもへったくれもない中で勝手に暴騰した株価ですから、下落の適正価格のめども全く想定しづらく、下手をするとこの売りが新型コロナの二番底形成の動きの引き金を引く可能性が高まりつつあります。
いずれにしてもまだ米株の相場は極めて割高な水準であり、市場が正気に目覚めればまだまだ下落する余地があるのが現実で、これで史上最速のバブル相場が逆に最速で終わりに向かうのかどうかは注意して見極める必要がありそうです。
気になるのは為替が一切反応しないこと
この米株の衝撃的な下落に直面しても為替の世界ではドル円もユーロドルもほとんど大きな動きをみせずに、方向感のないランダム相場を継続中です。
ビットコインの市場は明らかに巻き添えを食って下落が進みましたが、為替が全く連動しない点も非常に気になるところです。
こちらも週明けからの動きを待って動向を探る必要があります。