米株は9月にそれなりの下落を経験し、その後は上下に振れながらも何とか高値圏を維持しています。

しかし、その中でもハイテク株についてはかなり暗雲が立ち込め始めており、ここで株が崩れだすと年末の上昇も期待できない状況に陥る可能性がでてきています。

その大きな理由が米国巨大IT企業への規制強化の問題です。

巨大IT規制実施なら株価は大幅下落


この数週間というもの、トランプの新型ウイルス感染のニュースがあまりにもノイズレベルの高いものとなって、ほかの重要なニュースがかき消されることとなりました。

米国下院の司法委員会は10月6日にGAFAとよばれるグーグル、アマゾン、アップル、フェイスブックなどの巨大IT企業に対する独占禁止法調査の報告書をまとめて提出し、こうした巨大企業がデジタル市場において圧倒的な支配力をもつことにより競争環境を排除していると指摘しており、分割を含む規制の強化を求める内容となっている点が注目を浴びています。

この内容は下院ですからもっぱら民主党議員による取りまとめとなっていますが、11月の選挙次第では実現の可能性はかなり高くなり、仮にプラットフォームとビジネスが分離するような事態になれば、現在まで続いている米国の株高も一気に崩れ去りかねない状況になってきているのです。

ウォール街のマネージャーたちは、こうした巨大IT企業を分割するようなことがあっては米国株式市場は大幅下落に追い込まれることになるので、さすがに民主党もそこまで厳しい規制は実施に及ばないのではないかといった楽観的な見方をしているようで、民主党内はかなり強硬論がでてきており、実現の可能性は決して排除できないところにきています。

グーグルの独禁法違反はもはや決定的で株価は下落

検索エンジンの世界最大手グーグルは既に市場シェアが8割を超える寡占企業となっており、米司法省はすでに日本の独占禁止法にあたる反トラスト法違反でグーグルを提訴する見通しであることが発表されています。

もちろんこの提訴が即反トラスト法違反になると決まったわけではありませんが、事実上検索エンジンといえばグーグルしかワークしないのが現実で逃げ場は考えておかないのが実情で、これが実現すれば1990年代後半のマイクロソフトのウインドウズの訴訟以来の大型独禁法法廷闘争の案件となる見込みです。

実際グーグルの親会社であるアルファベットの株価はここのところ下落気味であり、これまでS&P500の中でGAFAMと呼ばれる全体の1%にあたる5銘柄が総時価総額の20%にあたるという、猛烈に大きな株価を構成してきた相場にも暗い影がさそうとしている状況です。

今のところ大幅な下落には至っていないものの米株相場を背負って上昇してきただけに、この動きはNASDAQ市場にとっても転機になりかねない状況といえます。

Data Tradingview

バイデンによる増税案もハイテク株の先行きに重し

新型コロナ感染でトランプの支持率は一段と低下している世論調査がではじめており、バイデン新大統領誕生を株式市場が織り込み始めています。

ただ、バイデン氏は法人に対する大幅増税案をもっており、これが実現した場合にはIT、通信サービス、一般消費財セクターでは2桁台の減益が見込まれることから、こちらも株価を下げる大きな原因となりそうで、大統領選の行方に注目が集まっています。

もちろん米株相場はあまりにも上昇しすぎていますから、下落による調整が入るのは仕方ない状況ですが、それにしてもこれまで上昇一本できた相場に大きな転機が訪れる可能性は認識する必要がありそうです。

米株相場とかなり相関性が高いのがドル円ということになりますが、IT系の株価が大崩れになれば影響を受けることになるのは免れず、ここからの為替も米株次第で下落に転じる危険性がでてきています。

市場は米国大統領選挙に注目していますが、それとは別のシリアスな問題が浮上していることを忘れてはなりません。