米株市場では新型コロナワクチンの開発が進んでいることから、既にポストコロナを織り込むような相場の動きになっています。
それとは裏腹に米国民は新型コロナの影響で収入を失っている人が激増中で、年末年始にかけて家の立ち退きや差し押さえに直面する成人が驚くほど発生しそうな状況になってきています。
これは米国国政調査局が2020年11月9日に発表したデータに基づくもので、11月からカウントして2か月以内、つまり年内に家賃や住宅ローンの支払い遅延を起こしている世帯の総数1780万人の実に3分の1にあたる580万人が家を失う可能性があることを示しています。
これはあくまで成人の住宅賃貸契約者やローン契約者でその家族は別途存在するわけで、家を失う人の数は非常に大きなものになりそうです。
クリスマスからニューイヤーという大きな節目であるにも関わらず、大量の人が家からたたき出される危機的な状況に直面しているというのはとにかく驚かされます。
各州によって事態はかなり異なるものに
上述の米国国政調査局が維持している州別の家賃やローン等の支払い不能者の率が上のような状況で、赤くなればなるほどリスクが高い状況となっています。
これによるとネバダ、ワイオミング、サウスダコタ、カンザス、アーカンソー、フロリダ、ウィスコンシン、サウスカロライナ、メリーランドの各州は実に全世帯の40%以上が支払い不能から家を失いホームレスに転落する可能性があるということで、尋常ではない状況であることがわかります。
フロリダやネバダ、アーカンソーといった地域はすでに滞納率が50%を超える危機的な状況で、この地域だけでも年初には75万人以上の人たちがホームレスに陥る厳しい状況に直面しているといいます。
米国のメディアでは感謝祭以降のブラックマンデーが好調などといったかなり楽観的な報道をしていますが、国民は新型コロナで想像以上に疲弊しており、クリスマスのプレゼントを買うどころの騒ぎではなくなっていることが見えてきます。
米国ではCARES法の施行により住宅取得者でパンデミックにより支払い困難に陥った場合には、住宅ローンの支払いを最大1年間延期させることができるようになっていますが、今年早い段階でこの措置の適用を受けた人たちは来年3月には支払い猶予期限を迎えることから、年明けも家を失う人は月次で増加しそうな状況です。
この法律では労働者への給付金の交付が3月から交付されていますがそれも12月末で終了となっており、政権交代も絡んで来年からどうなるのかは全く決まっていません。
米株はこうした最悪の実態経済にさやよせする可能性も
米国のGDPは実に7割が個人消費により支えられていますから、そもそも自宅を失う人が続出する様な状況では消費が伸びるわけもなく、実態経済を一切無視して上昇しつづける米株の状況にはかなりクビをかしげるものがあります。
今年のコロナバブルは特別なものであるという見方もよく耳にしますが、相場に特別という状況はありません。
ここからどこかのタイミングで、景気と実体経済に株価がさやよせしてくるタイミングが起きることが非常に危惧されるところです。
企業業績も経済指標もお構いなしで、勝手に上昇しつづける相場の賞味期限はここからそれほど長い可能性はないと思われ、激しい調整局面が訪れることが懸念される状況になってきています。
民主党の新政権が即座に政策を実施することができればいいのですが、上院が共和党過半数となった場合にはそう簡単にはいかない可能性もあり、ここからはもっぱら政治の動きに注目することになりそうです。