https://www.sankeibiz.jp/macro/photos/190621/mca1906210500006-p1.htm

ニッセイ基礎研究所が試算した日銀の保有ETFの時価総額が、2020年11月末でとうとう45兆600憶を超えたとのことで、含み益は11月の日経平均の高値で10兆円を超えることになったという報道が出回っています。

これは実に東証1部の上場企業の時価総額の7%に相当するもので、あきらかに大きくなりすぎた感があります。

先進国を見渡してみても中央銀行がここまで株式市場を支配している国はなく、米国もたしかに債券は買い入れていますが、株式を直接買い入れて市場を支配する動きはしていません。

確かに人工値付け相場は株価の急落を支え安定的な株価を維持することには役立っていますが、果たしてこれが資本主義の形態なのかという大きな疑問も生まれることになります。

過去の株式市場でも特定のプレーヤーがあまりにもシェアをとり過ぎた仕手戦株などの市場では結局相場がおかしくなり、暴落で終わりになるという悲劇的な事態を招いているだけに、状況は明らかにおかしいものになってしまっています。

莫大な含み益がでても売るに売れない絵にかいた餅の状況

このETF保有による利益は、本来高値でうまくリカクできるなら財政政策に利用するといった手もあるのでしょうが、ひとたびこの相場のクジラが自ら保有ETFの売りを入れてきたことが明らかになれば市場は騒然となり一気に売りモードに転換するため、下手をすれば大暴落の引き金を引きかねない状況であり、どんなに含み益がでてもなんら利益を獲得することができないのが実情です。

結局は富裕層と自社株を大量保有する経営者、海外から積極的に投資してはつまみ食いをするファンド勢以外はこの人工株高はほとんど意味がないのが実情で、政権にとっては株高こそが景気回復、経済上昇感を醸成する非常に有効なツールなのでしょうが、度を越した日銀のETF大量保有がほかに何の意味があるのかが大きく問われる状況になりつつあります。

このまま継続すれば日本株市場は健全な資本主義市場ではなくなる

冒頭にも書きましたが、中央銀行で直接的に株を買い入れるというオペレーションを長期に継続しているのは日銀のみで、ある意味非常に特殊な世界に陥りつつあります。

株式は自律的に上げたら下げるという循環機能をもっており、下げる局面があるから上げも大きくなるという動きをするのですが、一切下げを認めないと結果的に相場は長い日柄調整に時間を使うことになり、まともな上昇もはかられないという非常に大きな問題に直面します。

29年ぶりに高値を示現したといった報道が飛び交っていますが、日銀がここまで人工的に買い支えてもまだ89年の最高値からみると1万1000円以上の開きがあるわけで、いかにこうしたやり方が市場のダイナミズムを削ぐことになるかがよく理解できます。

確かに米株は史上最大の中央銀行起因のバブル相場ではありますが、GAFAなどはそれに見合う業績も出しており、単純にブームで上昇しているだけではありません。

もちろんテスラ株のように危うい銘柄もありますが、それでも本邦の株式市場にくらべれば相当ましな状況です。

ひとたび大幅下落となれば莫大な含み損を抱える日銀

この日銀人工値付け相場ですが、世界の株式市場全体でバブルが崩壊するようなことになれば、必ずや暴落に見舞われることになります。

そうなると大量保有のETFを抱える日銀は未曾有の含み損を食らうわけで、恐らく別の組織に保有ETFを移動させて大がかりな公的とばしを行うことで長期に損失を処理することになるのでしょうが、もともと国の資金で行っているわけですから、こうしたロスがでても何の意味もないのは明らかです。

日銀はこのETF買い政策の出口を一切示すことができないままの状態ですが、この先どこまでこれを続けるのかが大きな問題になる時期は刻々と迫っているようです。