米国では新政権スタートまでほぼ40日ほどになってきましたが、通常の大統領交代時期と違いトランプ政権は残り40日もかなりアクティブな動きをしており、いわゆるレイムダック状態に陥っていないことには相当注意が必要になってきています。
とくに注目しておきたいのは外交関係の動きで、普通であればこの時期終末政権は大きな動きは見せないもので、トランプに関してはとにかく自分の在任期間中の残り40日でも様々なことを精力的に決めている点が非常に気になるところです。
米中関係悪化や中東情勢緊張化再来は十分あり得る状況
トランプ政権は任期の終盤にさしかかって、中国共産党員とその家族に対する米国ビザの制限を発表していますし、アメリカ国土安全保障省は12月2日に中国の新疆ウイグル自治区の組織「新疆生産建設兵団」が生産した綿製品について強制労働によって生産された疑いがあるとして、アメリカへの輸入を停止する措置をとっています。
トランプは依然中国が米国大統領選挙に関与し不正を企てたのではないかという疑念をもっているようで、実際に州議会ではそうした不正の兆候も見つかりだしている状況で、政権終末期なのにもっとも対中政策が厳しいところに至っています。
一方11月27日、イランの核開発で中心的な役割を担ってきた科学者のモフセン・ファクリザデ氏が首都テヘラン近郊で暗殺される事件が起きています。
イランのザリフ外相は「イスラエルの関与を示す重大な形跡」があると指摘し、革命防衛隊は報復を宣言しており緊張が高まっています。
さらに直近の報道では、AIを実装した人工衛星で操作された自動機関銃が使用されたことも明らかになってきており、イスラエルのみならず背後に米国がいるのではないかという懸念も高まりをみせています。
イランといえば2018年にトランプ米大統領がイラン核合意から一方的に離脱して以降、緊張が高まったことは記憶に新しいところですが、こちらもトランプが最後に中東情勢をかく乱させているのだとすれば非常に危険な状況で、とくにイスラエルはバイデン次期大統領が再度イラン核合意に復帰を示唆していることに猛烈に反発しているだけに、この時期にトランプがイスラエル・ネタニヤフをサポートしたことが暗殺に繋がった可能性も否定できない状況です。
退任といってもまだ40日あまりの期間が残されているだけに、ここから何かさらにエスカレートしたことが起きるかどうかをしっかり見極める必要がでてきているようです。
トランプ支持者が暴れだす可能性も否定できない
米国では14日の選挙人の投票に向けて、民主党政権に対する反発を強めている共和党の熱狂的な支持者がなにか暴動的なことを引き起こすのではないかという懸念も高まっています。
国内では全く報道されませんが、州議会ベースでは多数の公聴会が開催され実際に不正選挙の事実なども出始めており、このまま選挙人投票でバイデン勝利となった場合には相当トランプ支持者の不満を募らせることになりそうなのが危惧されています。
トランプ自身は選挙人投票で正式に敗北すれば、ホワイトハウスから去ることを正式にほのめかしていますが、残されたこの期間に想定外のことがおきるリスクについては十分に意識しておく必要がありそうです。
とくにこの時期は市場参加者が激減し流動性がきわめて低下する時期になりますから、だれも想定していなかったような事態が起きた場合驚くほど相場が動く可能性が考えられ注意が必要になりそうです。
為替の世界ではリスクオフから米債が急激に買われるような動きになった場合、金利が明確に下落することからどうしてもドル安になりやすく、年末年始にむけて円高が進む危険性も考えておくことが肝要になりそうです。