米国大統領選挙の影に隠れてあまり報道されていませんが、中国金融市場では10月、11月と有力な国有企業の発行した社債にデフォルトが相次ぎ、この11月20日までに国内社債デフォルトは156件、1778億元(日本円で約2兆8200億円)と既に昨年の年間記録(1557億元)を大幅に上回り、国有企業の実に70%の社債がデフォルトというただならぬ状況に陥っています。

さらに直近では、ドイツのBMWと合弁会社を設立した華晨汽車集団(遼寧省)が社債の元利払いを延滞するといった状況に陥っており、実は国内では大混乱に陥っていることが明確になりつつあります。

こうした企業はほぼ全てが投資適格格付けを受けており、誰もがデフォルトなど起きえないと信じられてきたところばかりで、当局の支援が当然とされてきた国有企業に金融機関や地方政府の支援が行き渡らなくなっていることが懸念されはじめています。

これまでは非常に経営状態がよろしくない国有企業は確かに見捨てられることもあったようですが、ここまで一般的な国有企業がデフォルトに追い込まれるというのは間違いなく異常な状況で、中国本土では何かが起きていることは間違いなさそうな状況です。

こうした中国企業は国有企業であってもほとんど社債はドル建てで起債しているところが多く、これもデフォルトと関係があるのではないかと見られ始めています。

米国政府から排除をもとめられる中国企業も資金調達が厳しい状況に

米国では12月2日下院で外国企業説明責任法が可決されました。

法案タイトルとしては外国企業全般を指すものに見えますが、実は完全に中国企業を狙った内容で、中国政府の統制された資金を受け入れている中国系企業や中国共産党メンバーが役員に入る企業などを中心にして、一定期間監査に応じない場合には問答無用で状況を廃止するというのが法案の中身になっています。

アリババやテンセントなどは早くからこうした動きを察知して、香港市場に上場を果たすことで米国株式市場からの資金調達が途絶えてもやっていけるように準備ができていますが、数百社と言われるほかの中国系企業で米国株式市場に上場しているところはそうしたすべを持っておらず、単純に米株市場から退場を余儀なくされますので、ここからはかなり深刻な状況に陥ってしまいそうです。

米国で上場する中国企業は上場で集めたカネを担保にドル建ての社債を起債して運用するのがほとんどで、米株市場から放逐されてしまった場合にはこうしたスキームを活かすことができなくなることから、米国政府の締め出し政策は予想以上に各企業を追い詰める結果になりはじめているようです。

これまで中国企業のデフォルトは国営企業も含めて、海外ではほとんど影響がなかったのが現実で、これだけデフォルトが多くなることを考えますと、世界的な影響を及ぼすことになる可能性も否定できず、とくに債券市場でのここからの動きに注意が必要になりそうです。

新型コロナウイルスの爆発的感染から一転して、早期に終息をはかり経済の回復が世界的に見ても一番早くなっているとされてきた中国ですが、国内では想像している以上に企業の経営状況が悪化しているようで、それがいよいよ世界に伝搬する時期が到来しているのかも知れません。

中国企業にとってはドルの調達コストも非常に高いものになってきていますから、そもそもドル建てで起債して利払いや償還の費用を捻出すること自体が相当難しくなっているようで、年末にかけてなにか具体的な問題が広がりを見せることが非常に危惧されはじめています。

いち早く景気回復が示現しているとされる中国経済の実態はどうなのかという点も気になるところです。