英国タイムズ紙が日本時間22日の早朝に伝えた記事によりますと、日本政府は非公式ではあるものの与党幹部の話として、新型コロナ感染拡大のために東京五輪を中止せざるを得ないという結論に達したことを伝えています。
これを受けてなのかどうかははっきりしませんが、日経平均は下落をしておりシーズナルサイクルとも相まって、相場は調整局面入りした可能性が高まります。
ただし、世界的にはすでにこの中止はかなり織り込まれており、金融市場がいまさらこの決定を受けて大きく下落する可能性は考えられないところにあります。
2032年を目指すというがかなり現実味が低い可能性も
タイムズ紙の記事によれば2024年のパリ、2028年のロサンゼルスに次いで、再度2032年に名乗りを上げることを考えているということです。
東京五輪開催にこだわる森喜朗、二階、元Jリーグチェアマンの川渕三郎などは、11年後にこの世に存命しているかどうかも判らない状況で、財政的にもメリットがほとんどないことは今回の開催延期、中止騒ぎで明らかになっていますので、本当に再度手を上げて日本での開催にこぎつけられるかどうかは現実的ではなくなりつつあります。
21年の開催中止しても暴落相場はやってこない
昨年の今頃、東京五輪の開催を中止した場合、前代未聞の不景気が到来するといった不吉かつでたらめな記事がネットやレガシー媒体に踊ることとなりましたが、実は新型コロナの感染拡大でインバウンド消費は絶滅、飲食、物販の小売りも壊滅的なダメージを受けており、五輪開催中止の前に景気は大きく下げることとなってしまいました。
しかし、FRBを中心とした主要国の中央銀行が市中に資金をバラまくというかつてなかったような無制限緩和を行った結果、株価だけは実態経済とはなんの関係もなく史上最高値を更新するといった推移を継続中で、現段階で東京五輪の開催中止をしても相場が大きく下落するような材料にはならなくなっているという事実があります。
また、経済の直接効果はインフラ整備関連がすべて投資も完了していますから、海外からの見物客が制限される、もしくは無観客開催が実現した場合はこれ以上かりとれるものは何もないのが現状です。
さらに五輪後のレガシー効果を27兆円などと試算しているシンクタンクもありますが、こちらはかなりでたらめの話で、もとからなかったはずの効果の損失を考えていることは間違いない状況です。
政権内でだれが中止を口にするのかが最大の問題か
2月からファイザーのワクチン接種が始まり、実際の接種可能者は数千人程度ということで、五輪開催までにほとんどの国民がワクチンを接種できる可能性は極めて低いことになります。
また、国民皆接種といっても菅政権はなんらその体制を事前に確立しておらず、慌てて任命した河野大臣が今から考えるということで、ワクチン自体の供給を含めて7月までに完了するとは全く思えない状況にあります。
恐らくワクチン接種ではもはや五輪開催にこぎつけられないことは菅首相も認識されていることと思われますが、問題は長老が東京五輪実施を口にする中にあって菅首相が主体的に開催断念を口にすることができないことで、小池都知事も同様にまず口火を切ることはできないところにあるようです。
しかし、この開催断念の発言を後ずれさせればさせるほど余分なコストを強いられることになるのは間違いなく、相場にも実態経済にもさしたる影響がないのであれば、早急に決断することが求められる状況です。
他国に目をやりますと、欧州圏も米国もすでにオリンピックに選手を派遣するような状況にはなっておらず、世界的な情勢から見ても開催は無理といえます。
無観客で無理やり実施したとしても、それが本当に平和の祭典として人類がウイルスに勝った証になどなるはずもないのは明白で、逆に決められないことが相場で嫌気されるという新たなリスクにつながることも考えられます。
決断力が欠如した政権下で国民はすでに自助努力だけでなんとか乗り切ることを余儀なくされていますが、実態経済の疲弊がやがて株式市場や為替市場に甚大な影響を及ぼすことも改めて危惧される状況です。