Photo NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210218/k10012873821000.html

日銀が3月の政策決定会合に向けて、これまで株価が一定の下落に陥った時に買い入れを行ってきたETFの購入を株価上昇時には行わないことを明確化する検討に入ったというニュースが流れて市場の関心を集めています。

この報道が市場に流れたのは18日ですが、翌19日の東京市場はその影響を受けてかどうかは判りません。

日経平均が一時的に大きく下落する場面があり一時3万円を割り込みましたが、後場の最後になんとか持ち直してぎりぎり3万円台を維持して今週の相場を終えています。

日銀は量的金融緩和の一貫として、ほぼ8年近く前から株のETFをせっせと買い付けており、完全な人工値付け相場の様相を呈しているのはご存じのとおりで、果たして今後株価高値の段階で相場が下落したときに日銀がETFを買い入れしなくなった場合、日経平均はこのまま上昇を維持することができるのかどうかに大きな注目が集まりそうです。

日銀の損益分岐点はほぼ2万1000円レベル

日銀の保有ETFは昨年12月段階ですでにGPIFを上回っており、野村証券の試算では日銀の保有するETFは時価で約46兆5600億円で、約1兆円上回っているといいます。

この段階で国内最大の株主は日銀ということで、個別企業でも軒並み日銀が筆頭株主という奇妙な状況が示現している状況です。

日銀の買い入れ価格の損益分岐点は、ほぼ2万1000円と黒田総裁は国会で答弁していますから、闇雲にここから高値でETFを買い増ししなければ含み益が維持できることになりそうです。

含み益は15兆円超と言われていますから、自分が株を買って自ら含み益を増やす作業を延々と行っていることになるわけです。

転載 日本経済新聞

含み益は出ても一切売れないのが日銀の購入したETF

この日銀購入のETFですが、いくら含み益が出たと言っても日銀が売り始めたと市場に情報が漏れた途端に株価は大きく下落することになりますから、結局売り飛ばすことはできず幻の含み益維持状態が続きます。

株価が何かをきっかけにして暴落し、2万1000円の日経平均水準を割り込み始めた場合には逆に大きな含み損を抱えることになりますし、状況次第では債務超過にもなりかねないものがあるわけで、この日銀ETF買いの過度な積み増しは非常に心配な状況です。

米国FRBも日銀を真似るような形で、債券の領域では積極的に買い向かう動きをみせていますが、世界中の先進国を見渡してもこれだけ株を買い漁っている中央銀行は日銀だけですから、想定外の事態に追い込まれた場合が非常に危惧されるところです。

また、このままの勢いでETFを買い進めた場合もはや自由な資本主義市場ではなくなる可能性もあり、ほとんど計画経済のような株式市場が形成されて活力ある相場は完全に失われるリスクも顕在化することになります。

黒田総裁は依然として景気回復のために今の状況を継続する旨を口にしていますが、人類史上未経験の道のゾーンに入り込もうとしていることは間違いなくすでに緩和の出口は全くなくなっていることがわかります。

新型コロナ禍では決して実態経済がよく回っていないのに、株価だけが経済の実情を無視して勝手に上昇を続けるというのは米国市場も同様の状況です。

持てる者がさらに儲かるだけで、一般の国民はちっとも潤わないという大きな問題も顕在化しようとしてきているだけに、ここからの日銀の政策は非常に注目されることになりそうです。

相場自体も日銀が買い支えないとなったときに、これまでのような急ピッチの上げを維持することができるのかどうかも危惧される状況です。

3月に日銀がどのような政策発表をするのか、それを受けて相場がどう動くのかに大きな関心が集まりそうです。