2008年のリーマンショック以来、人ではなくコンピュータを駆使して数学や物理学の博士号を持つ人々が雇用され、相場のファンダメンタルズとは全く関係なく数理的に相場の売買を実現することで利益を得てきたいわゆるクォンツファンドがいきなり苦境に追い込まれているようで、その影響が市場に出始めているようです。

例えばレイダリオといえば2008年のリーマンショックをいち早く察知し、それに巻き込まれないような分散投資で利益を確保しながら乗り切った存在として有名ですが、彼が先行開発し周辺のファンドが完全に模倣することで大手はほぼ同じ手口になったリスクパリティ戦略は昨年の今ごろの大暴落以降全くうまく機能しなくなっており、足元の下落相場でもほぼすべての市場が下落することから分散投資の逃げ場を失うという厳しい事態に追い込まれています。

先週2月最終週の後半の相場はまさにこうした事態が起因して相場が下がることになっています。

クォンツを名乗るファンドはだいたい似たようなものでパッシブ運用は分散投資した相場の金額ウエイトを常に一定にする運用方法ですから、値上がりした投資商品は一定の利確売りをしますし、損失が大きくなった投資商品は問答無用で損切してしまいますから、一時的に相場には驚くほどの売りがでたり特定市場で暴落が示現したりするといった状況で、個人投資家は何が起きているのか判らずに大きな含み損を抱えたり強制ロスカットを食らうといった影響を如実に受けているのが現実です。

週明け3月1日の東京タイムでは1200円も暴落したはずの日経平均が元気に700円近く上昇して始まっており、先週あえなく損切した市場参加者の深い落胆の溜息が聴こえて来そうな展開となっています。

これも米株におけるリバランスやパッシブ運用のファンドの容赦ない機械的損切が影響していることから大きく下げた株価が月初週明けから新たに買い向かわれた結果であろうと思われます。

こういう相場状況を見ると誰かが作為的に振り落としをやっているのではないかとさえ疑いたくなるわけですが、実はファンド自体もこのようなプロセスでは儲からないという厳しい事態に追い込まれているのが実情で、コンピュータとAIの席捲で著しく様子が変ったはずの相場は逆にこうした装置の機能不全に陥るというなんとも皮肉な状況になっていることが窺われます。

個人投資家の市場乱入もファンドの投資を大きく狂わせる結果に

特に昨年からの相場でクォンツをかく乱する存在となっているのがロビンフッダーに代表される素人の個人投資家の投資手法で、機械学習であるとかディープラーニングといった市場状況分析を得意とするコンピュータも無理論の個人投資家の怖いものなしの乱入売買には行けない状況で逆にかく乱されてしまっているようです。

こうなると個人投資家、あるいは人による投資が優位性を増してくることも考えらますが、そううまくいかないのが相場の厳しいところでどこかで一斉退場を強いられる厳しい展開がここからやってくることになるのでしょう。

月初に一旦相場はリセットされていますが、また下落に追い込まれますとパッシブ運用をしているファンドがコンピュータの独自判断で容赦なく損切をしてくることになりますから、こうした運用が中止にならないかぎり相場には大きな影響が継続して押し寄せるリスクが高まることになりそうです。

3月はバイデン政権の追加経済対策法案が可決してまたしても米国世帯の半数以上に1400ドル程度の追加給付金が支給され、これが株式投資の原資になる可能性がきわめて高くなりつつあります。

こうなるとまたファンドの投資とコンフリクトを起こす危険性は高まりますから、思わぬ形で相場にネガティブな影響が生じることも考えておく必要がありそうです。